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福島県いわき市のヨークいわきスタジアム(いわきグリーンスタジアム)で25日に行われた第107回全国高校野球選手権福島大会決勝。聖光学院は苦しんだ末、4年連続20度目の夏の甲子園切符をつかんだ。決勝も一時は追う立場となる中、持ち前の勝負強さで勝機を手繰り寄せた。春に逃した日本一を目指し、全国に臨む。会津北嶺は初の決勝で敗れたものの、会津勢初の夏の甲子園に迫る快進撃を遂げ、福島県の高校野球史に新たな一ページを刻んだ。
九回2死に会津北嶺の最終打者を内野ゴロに打ち取ると、聖光学院ナインが次々とマウンドに集結した。高々と掲げた選手の腕の指先には、頂点を示す「1」がかたどられていた。
四回に1点を先制した直後の五回、それまで好投してきた先発の主戦大嶋哲平(3年)が3点を返された。準決勝まで毎試合「ビッグイニング」を生んできた北嶺打線の勢いに直面した。主導権を譲り渡すかに見えたが、百戦錬磨のナインに焦りはなかった。「ここで点を取れなければ王者の名に恥じる」。発奮した打線は六回に反撃に転じた。終盤での劣勢を想定した練習を続けてきた成果を発揮。相手のお株を奪う打者11人、7安打の猛攻で6点を奪い、形勢をひっくり返した。守備でも鍛え抜いた球際の強さ、好連係で反撃の芽を摘んだ。
センバツで8強、春季東北大会で4強と実績を積んできた世代だが、夏の戦いは苦しんだ。主将の竹内啓汰(3年)は「他の大会とは別物。緊張感が全く違う」と福島大会を振り返った。大嶋にかかる負担や打線のつながり、ミスが課題に浮上する中、先制された3試合も逆転で制し、僅差での勝負も勝ち抜いた。
昨秋の始動から「花よりも花を咲かせる土となれ」をスローガンに掲げる。松井秀喜さんの星稜高(石川県)時代の恩師・山下智茂さんの名言を参考に、個々が能力を磨くのに加え、協調性を高める大切さを込めた。「自分たちはまだ未熟。力を高めなければならない」と語る竹内に満足感はない。開幕までの日々での成長を誓い「日本一」を目指す聖地に乗り込む。■初の決勝「悔いはない」
会津北嶺
聖地への夢、後輩に
会津北嶺は初の甲子園を逃したが、聖光学院と堂々と戦い抜いた。主将の五十嵐悠斗(3年)は仲間を一人一人抱き締め、感謝を伝えた。「決勝の舞台に立てて楽しかった。悔いはない」と充実の笑みで語った。
昨秋の県大会は3回戦で敗退。春の県大会も1回戦で敗れた。「個性豊かな半面バラバラだった」と振り返る。選手は「このままでは勝てない」と危機感を共有した。9人の3年生を中心に私生活も含めて意見を出し合い、一体感を高めてきた。
努力の成果はノーシードで臨んだ夏に実を結んだ。「攻撃野球」をモットーに強豪に次々と打ち勝ち、決勝に駆け上った。決勝でも五回に単打5本を集めて一挙3点を挙げ、リードを奪う「らしさ」で球場を沸かせた。「全員が一つの目標に向かい、取り組めた」と五十嵐は仲間を誇った。聖地への夢は共に戦った1、2年生に託す。
同校初、会津勢40年ぶりの決勝進出に、地元から多くの激励が寄せられた。木口奨監督は「選手にとって大きな経験と財産だ。短期間でよくここまで成長してくれた」とたたえた。■甲子園での躍動期待
内堀知事コメント
聖光学院の4連覇を受けて内堀雅雄知事は「選手の皆さんが夢に向かい挑戦を続ける姿は、復興への歩みを続ける県民に多くの感動と勇気を届けてくれた。甲子園では県代表としての誇り、支えてくれた方々への感謝の思いを胸に練習の成果を存分に発揮し、躍動されることを期待している」とのコメントを出した。