悔しさ自分の言葉で 福島県郡山市の爆発事故から5年 重傷負った女性、被害者参加制度利用へ 責任と原因究明を

  • [エリア] 郡山市
悔しさ自分の言葉で 福島県郡山市の爆発事故から5年 重傷負った女性、被害者参加制度利用へ 責任と原因究明を

福島のニュース


福島県郡山市島2丁目の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」で起きた爆発事故は、30日で発生から5年を迎える。顔に重傷を負った郡山市の美容師の女性(51)は福島民報社の取材に「当事者にとって節目はない」とした上で、「もう5年たつのに(責任の所在と原因の究明の)進展が少ない」もどかしさ、「まだ5年しかたっていない」のに世間から忘れられていく不安を口にした。福島地検は昨年11月、ガス設備の法定点検を担った郡山エルピーガス保安管理センターの職員を業務上過失致死傷の罪で在宅起訴した。初公判の期日は未定だが、女性は被害者参加制度を利用する方針だ。「時間を返して」。自らの言葉で裁判官らに訴える。
骨や歯が粉々に砕けた顔の治療は今も続く。傷がある顔の右側や口内に激痛が走るようになった。医師から、右下顎の骨を固定する金属プレートのねじと、その近くに生える親知らずが一因と考えられると説明された。不安要素を取り除くため6月末、ねじと親知らずを抜く手術を受けた。抜歯は成功したが、ねじは固着しているのか、取り除けなかったという。
ねじは口内に突出したままだ。感染症のリスクが高まり、再手術が必要になった。年内に右頰を切り開き、ねじを除去する予定という。顔にメスを入れたのは4年前が最後。ようやく顔の傷が目立たなくなりつつあった。
「また振り出しに戻ってしまう。顔に傷が残り、顔面まひで口角が上がらないのは女性としてつらい」
痛みと闘い続けた5年だった。美容室の売上金を入金しようと立ち寄った銀行で、飲食店の爆発事故に遭った。何の落ち度もない。それなのに、事故そのものへの関心は徐々に薄れてきていると肌で感じる。「仕方がないこと」と頭で理解はしていても、世間との認識が少しずつずれていくのが悲しくもなる。
公判では被害者参加制度で法廷に立ち、事故の責任の所在や原因の究明を求める方向で調整している。「治療に費やした時間を返してほしい」。これまでの歳月で何度も味わった悔しさを自らの言葉で述べる。
「このような事故は二度と起きてはいけない」■家族、苦悩重ねる
息子の成長を共に見届けられず
女性の夫(51)が初めて取材に応じ、被害者家族としての思いを語った。
事故直後は「この先どうなってしまうのか」と不安にさいなまれたが、女性が入院している間、中高生だった息子2人を守るのに必死だった。悔しかったのは、部活動の応援などを通して子どもが成長していく過程を夫婦そろって見届けられなかったこと。「事故さえ起きなければ…」との思いは、消えることはない。
「なぜ事故が起きたのか、誰の責任なのか。明らかにならないと被害者側として納得できない」。妻に寄り添い、公判への同行を希望している。







事故で死亡した仙台市の内装業者男性=当時(50)=の遺族も、被害者参加制度を利用する方針。男性は店の改装工事のため入店した直後、事故に巻き込まれた。【爆発事故を巡る経緯】▷2020年7月30日
午前8時55分ごろ爆発。内装業者の男性死亡、27人負傷▷2021年9月2日
郡山署が運営会社社長ら4人を業務上過失致死傷容疑、死亡した内装業者の男性を業務上過失傷害容疑で書類送検▷2023年3月31日
福島地検が5人を不起訴処分4月12日
郡山市の美容師の女性が死亡した男性以外の4人について福島検察審査会に審査を申し立て▷2024年1月23日
福島検察審査会が4人に対し「不起訴不当」を議決11月26日
福島地検がガス設備の法定点検を担った郡山エルピーガス保安管理センターの職員1人を在宅起訴