ゲンゴロウ新種発見 愛媛で4種 29年ぶりに新属 昆虫分類学を研究している柳丈陽さん(福島県南相馬市在住)ら

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福島県南相馬市小高区在住で昆虫分類学を研究している柳丈[たけ]陽[はる]さん(25)らの地下水生甲虫研究グループは、新属新種となる「マツヤマイドケシゲンゴロウ」を含む新種のゲンゴロウ4種を愛媛県内で発見した。ゲンゴロウの新属発見は29年ぶりで、4種とも地下水層に生息する。グループによると、地下水層に暮らすゲンゴロウには謎が多く、発見は実態解明への大きな一歩という。30日、日本昆虫分類学会の学会誌に発表した。
「属」は生物の分類階級上、「種」より大きなグループを表す。マツヤマイドケシゲンゴロウ属と命名されたマツヤマイドケシゲンゴロウ以外に見つかった3種はマツヤマムカシゲンゴロウとクノムラムカシゲンゴロウ、クノムライドケシゲンゴロウと命名された。体長はいずれも約1・2ミリ~約2・5ミリ。
マツヤマイドケシゲンゴロウとマツヤマムカシゲンゴロウは3月に松山市の重[しげ]信[のぶ]川近くの井戸、クノムラムカシゲンゴロウとクノムライドケシゲンゴロウは昨年10月に宇和島市の来[くの]村[むら]川近くの井戸で見つかった。両地点とも生息調査が行われてこなかったという。
調査は2016(平成28)年から西日本を中心に全国で実施。自治体や企業、地元住民の協力を得て手押しポンプや井戸の地下水をくみ上げ、水中の生物を調べた。きれいな地下水を好むゲンゴロウは農薬による化学汚染や温暖化の影響を受け、絶滅の危機にさらされている。多くの未発見種が絶滅しても気づかれない恐れがあるという。柳さんは地下水を保護、保全する必要性に触れた上で「まだ分からないことが多い。福島県を含む全国各地で調査を進める」と話した。
動物分類学などを研究する法政大国際文化学部の島野智之[さとし]教授(56)は今回の発見について「これまで知られていなかった地下水の多様性を示し、ゲンゴロウの生態の謎を解き明かす鍵になる」と評価している。