夏休みの観光地緊迫 22都道府県に津波到達 福島県浜通り住民「まさか」

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夏休みの観光地緊迫 22都道府県に津波到達 福島県浜通り住民「まさか」

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ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震の津波が福島県沿岸部にまで押し寄せた30日、浜通りの住民らに緊張が走った。夏休みでにぎわうはずの商業、観光施設は臨時休館し、関係者は利用客の誘導に追われた。今回は地震の揺れをほぼ感じない中での津波警報で、避難者の多くが「まさか、海外の地震でこれだけの津波が来るとは」と戸惑いを隠さない。緊迫する中、住民らは14年前の東日本大震災の記憶を教訓にして、迅速な避難行動を実践した。
「海岸近くの方は、高台に避難してください」。県内有数の観光地・いわき市小名浜の臨港付近は夏休み中のこの時期、多くの人が行き交うが、人影はまばらで、避難を促すサイレンと防災無線が鳴り響いた。
地震発生から1時間余り後の午前9時40分、津波注意報が警報に切り替わり、営業中だった周辺の施設は対応に追われた。アクアマリンふくしまでは、館内放送で周知した後、目印の旗を持ったスタッフの誘導の下で、来館者が展示スペース裏などを通り、足早に屋外へと向かった。
イオンモールいわき小名浜には買い物客らが一時、屋上などに身を寄せた。市との災害協定に基づき、屋上や施設4階の飲食店街などを開放。同施設によると、当時は従業員を含め施設内に2千人ほどいたが、目立ったトラブルはなかったという。テナント従業員の40代女性は「日頃からの訓練の備えで、落ち着いて避難できた」と話す。ロシアを震源とする今回の地震は北海道の釧路市など5市町で震度2を観測したが、福島県で震度1以上の揺れは観測されていない。いわき市内から買い物でイオンモールを訪れた30代女性は「まさか津波警報まで出るとは…。震災が脳裏をよぎった。早く落ち着いてほしい」と願った。近くの高台にある三崎公園の駐車場には避難した車両が連なり、多くの人が心配そうに海の様子を眺めていた。県内の海水浴場はいずれも遊泳禁止になった。
住民は東日本大震災の教訓を速やかな避難に生かした。相馬市で鮮魚店を営む小野千恵子さん(69)はこの日、臨時休業を決めた。東日本大震災の津波で店が流され、同じ場所に再建した。「命を守ることを最優先にしないと」と、避難を急いだ。【津波警報ドキュメント】▼30日午前8時25分ごろロシア・カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード8.7(速報値)の地震が発生▼午前8時37分気象庁が福島県を含む太平洋沿岸に津波注意報を発表▼午前9時ごろJR磐越東線の小野新町―いわき駅間の上下線運転見合わせ▼午前9時40分気象庁が福島県を含む太平洋沿岸の津波注意報を警報に切り替え▼午前9時45分ごろJR常磐線の勝田―仙台駅間の上下線運転見合わせ▼午前10時25分ごろ仙台空港の全滑走路使用中止に伴い、同空港着予定の航空機1便が福島空港に代替着陸▼午前10時30分ごろ県道広野小高線の一部を全面通行止め。同日夜に解除▼午前11時4分いわき市小名浜港に第1波が到達。最大で50センチの津波を観測(午後6時49分)▼午前11時33分相馬港に第1波の津波が到達。最大で70センチの津波を観測(午後7時1分)▼午後1時45分ごろJR常磐線の普通列車の上下線見合わせ区間を東海―仙台駅間に変更(特急列車は勝田―仙台駅間)▼午後8時45分気象庁が福島県を含む東北・北海道に出していた津波警報を注意報に引き下げ