福島のニュース
ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震で気象庁は31日、福島県を含む広範囲に出していた津波注意報を解除した。今回の津波災害を巡っては、人的被害は確認されなかった一方で、酷暑の中での避難を余儀なくされた住民の熱中症のリスクや車での避難が一部の道路に集中したことによる交通渋滞といった課題も浮かんだ。今後、予見される巨大地震では、福島県沿岸部にも今回を大きく上回る津波の襲来が見込まれている。より安全かつ迅速な避難の環境づくりが急務とみて、県などは検証や改善を進める。
30日の津波警報と注意報の発表を受け、最大で1500人近くが避難所に身を寄せたいわき市。小名浜港で観測された潮位の高まりは日付をまたいでも続き、避難所で一夜を明かした住民もいた。
ただ、避難所の暑さを懸念し、足を運ぶのをためらった住民もいた。市内小浜地区の海岸そばに住む無職男性(65)は近くの小学校が避難所となっていることは知っていたが、この日は30度以上の真夏日。体調への影響などを考え、冷房も使える車で移動し続けることを選ばざるを得なかったという。
市内豊間地区では住民ら約90人が高台にある公園や神社に一時避難した。地元消防団が水を支給する一方で、熱中症などにならないよう屋外を避け、車内で待機する人も多かった。地区に住む遠藤栄子さん(78)は約3時間、神社にとどまり、境内から海の様子を見守った。「暑かったが、日陰だったからまだ助かった」と疲れた様子で話し、真夏の避難時の対策の必要性を実感していた。
暑さを避ける目的も含め、多くの人が自動車を使用した状況も踏まえ、渋滞や事故を避けるためのルール作りなどの必要性も明らかになった。いわき市では海沿いも通る国道6号などの一部区間は通行止めとなり、沿岸部と市内の中心部をつなぐ県道小名浜・平線(通称・鹿島街道)などの幹線道路や高台の近くでは渋滞が発生する時間帯もあった。県道路管理課の伊藤仁規主幹兼副課長は「各課題を吸い上げ、災害発生時のより良い交通対策に生かす」と対応を検証する考えを示した。
東日本大震災を教訓に円滑な避難が進んだ地域もあった。相馬市消防団副団長の嶋田正照さん(56)は1人暮らしの高齢者宅を中心に回ったが、迅速に自宅を離れた世帯が多かったという。ただ、福島県で地震や津波が続く状況を踏まえ、住民に「慣れ」が生じる可能性を警戒。「強い危機意識を持たせるため、継続的な啓発が重要だ」と訴える。■気象庁
引き続き警戒呼びかけ
気象庁によると、8月1日ごろまで海面変動は続くとみられるものの、これまでより高い津波が押し寄せる可能性は低いとしている。海のレジャーなどに引き続き気を付けるよう呼びかけている。
大規模な地震の後は、地震活動が活発になりやすいとされる。気象庁の担当者は「今回と同程度の地震が起きる恐れはある」とし、今後も津波に注意するよう求めた。
気象庁は31日午前10時45分、神奈川などから沖縄にかけての広範囲の津波注意報を解除。午後4時半、残る福島、北海道、青森、岩手、宮城、茨城、千葉に加え、東京の伊豆諸島と鹿児島の種子島・屋久島を解除した。