福島のニュース
悲願の日本一へ―。Jヴィレッジ(福島県楢葉・広野町)で31日に行われた全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技準々決勝で、尚志が帝京長岡(新潟県)をPK戦の末に破り、苦しみながらも底力を発揮した。前日の30日には津波警報が発令。14年前に大津波の被害を受けた福島県で大会が固定開催される意義を見つめ直し、「県民に勇気と希望を与える」と躍動した。1日の準決勝の相手は強豪神村学園(鹿児島県)。高まった士気とホームの声援を力にして挑む。
「やったー!」。PK戦で尚志6人目のキッカーとなったFW岡大輝(3年)がゴールネットを揺らすと、割れんばかりの歓声が響いた。笑顔をはじけさせたイレブンは抱き合い、喜びを爆発させた。
序盤から攻める展開が続いた。計12本のシュートを浴びせたが、相手の堅い守備が阻んだ。最後までゴールを割れなかった。
PK戦は29日の桐光学園(神奈川県)に続き2戦連続。円陣を組んで気持ちを一つにした。互いに譲らない中、帝京長岡の6人目が枠外に外し、岡が冷静に決めた。
30日に予定されていた準々決勝が津波警報により順延になり、一部の選手に不安や動揺が広がった。選手は震災時は幼児で、記憶はほとんどない世代。宿舎でのミーティングで仲村浩二監督から東日本大震災の津波で大きな被害が出たことを改めて聞いた。さらに、震災があった2011(平成23)年の年末に開幕した選手権大会時、県民から「戦う姿に勇気をもらった」という手紙が届いたことも知った。
「粘り強く戦う姿や結果を見せよう」。選手は気を引き締め、激戦を耐え抜く原動力にした。疲れが見え始めた後半、帝京長岡の激しい攻撃にさらされた窮地では、DF陣が体を投げ出して守り切った。
準決勝に立ちはだかるのは前回準優勝の神村学園。主将の西村圭人(3年)は「被災地代表としての思いを胸に、自分たちの代で歴史を変える」と意気込み、尚志初の全国大会優勝を見据えた。■浜通り復興
注目集まる
住民も期待
尚志の4強入りを受け、県民は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が進む浜通りに注目が集まると期待を寄せる。
広野町の消防士で、いわきFCサポーターの根本達也さん(38)は「4強入りは福島県の誇り。地域全体が盛り上がる」とたたえた。動画配信で試合状況を見守ってきたが、強豪との戦いを後押ししようと1日は会場で応援するつもりだ。
大会会場のJヴィレッジに近い道の駅ならは(楢葉町)の駅長矢内優美さん(40)は、固定開催により毎年、多くの関係者が地域を訪れると期待している。「地元チームが残ってくれているのは頼もしくうれしい。粘り強さで最後まで勝ち上がって」とエールを送った。