福島のニュース
直近5年間の福島県内市町村議選で2割に当たる14町村議選が無投票となったのを受け、福島民報社は県内全59市町村議会に議員のなり手に関するアンケートを実施した。8割超に当たる51市町村議会が議員のなり手不足を実感。町村部ほど深刻で、立候補者が多い都市部との隔たりが鮮明になった。23市町村議会が定数削減や報酬増などの対策に着手した。人口減や少子高齢化が進む中、民主主義の根幹をなす議会をどう活性化させていくのか、試行錯誤が続く。
アンケート結果は【表1、グラフ】の通り。議員のなり手不足を「大いに感じる」は14議会(23・7%)、「ある程度感じる」は37議会(62・7%)で、合わせて51議会(86・4%)がなり手不足を実感。このうち町村議会は8割超の44で郡部ほど不足が顕著だ。
各議会は将来の議員確保に向け、さまざまな取り組みに乗り出している。具体的な内容は【表2】の通り。議会を身近に感じてもらうための報告会などの開催が13議会で最も多かった。次いで、なり手不足調査委の設置や議会広報紙の発行などの「その他」が10議会、定数削減が9議会、議員報酬引き上げは7議会だった。
新地町議会(定数12)は、2024(令和6)年度から二つの常任委で町内企業を訪問し、議会活動や議員の仕事などについて意見交換する試みを進めている。今年度は商工会と、なり手不足を議題に意見を交換。町議会事務局の担当者は「現状を伝えながら、議員に興味を持ってもらえたら幸い」と取り組みの意義を強調する。
国見町議会(定数12)は2023年は無投票、2019年は立候補者が10人と定数に満たなかった。「議会に対する関心がない」と危機感を抱き、町民約800人を対象にした議会に関するアンケートを実施。議員報酬の引き上げを含めた改革の検討に着手する。結果を議会活動の活性化に結び付けたいとしている。
一方、対策が思うように進まない議会もある。柳津町議会(定数10)は昨年、報酬の引き上げと定数減を議論する検討委員会を開催したがいずれも実現していない。民意の反映に影響を及ぼしかねない議員定数の削減には「慎重な検討が必要だ」との意見が出たためで、引き続き議論を重ねるという。報酬増も予算確保の難しさなどから見通しは立っていない。■2021年から2025年の県内市町村議選
無投票会津中心に14町村
直近の2021(令和3)~2025年に行われた各市町村議選で無投票となったのは会津地方を中心に14町村あった。さらに過去3回の選挙にさかのぼると32市町村議会で1回以上無投票があり、このうち国見、檜枝岐、昭和、中島、三春の5町村議会は2回、無投票だった。
楢葉町は2017(平成29)年の町議選、川内村は2023年の村議選でそれぞれ定数割れした。議員の高齢化に加え、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故により避難生活を続けている住民が多く、議員活動が困難な状況に陥っている現状が背景にあるとみられる。国見町は2019年、小野町は2024年の町議選でそれぞれ初の定数割れを経験している。
一方、都市部は須賀川、喜多方、本宮を除く10市は過去3回の選挙でいずれも立候補者が定数を上回り、少子高齢化と人口減少が著しい町村部と都市部での格差が浮き彫りとなった。
全国では2023年の統一地方選で実施された町村議選のうち3割超が無投票となった。民主主義の根幹をなす地方議員のなり手不足が深刻化している。■議会として議員のなり手不足があると実感しているか【表1】◆大いに感じる(14市町村)南相馬、国見、大玉、鏡石、只見、北塩原、会津坂下、柳津、昭和、会津美里、中島、平田、三春、楢葉◆ある程度感じる(37市町村)会津若松、須賀川、相馬、二本松、田村、本宮、桑折、川俣、天栄、下郷、檜枝岐、南会津、西会津、磐梯、猪苗代、湯川、三島、金山、西郷、泉崎、矢吹、棚倉、塙、鮫川、石川、玉川、古殿、小野、広野、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、新地、飯舘◆あまり感じない(6市町)郡山、いわき、喜多方、伊達、矢祭、浅川◆全く感じない(1市)白河◆未回答(1市)福島■議員のなり手不足解消に向けた対策の具体的な取り組み【表2】※複数回答◆議会を身近に感じてもらうための報告会の開催(13市町村)郡山、国見、川俣、大玉、鏡石、只見、西会津、猪苗代、会津坂下、柳津、金山、広野、楢葉◆その他(10市町村)郡山、桑折、天栄、只見、南会津、会津坂下、昭和、玉川、広野、新地◆定数削減(9町村)下郷、西会津、会津坂下、金山、中島、広野、楢葉、川内、浪江◆議員報酬の引き上げ(7町村)国見、川俣、鏡石、会津坂下、金山、昭和、川内