福島のニュース
若者の就職や地元企業を応援したい―。福島県二本松市の大久保涼子さん(36)は大学生と地域の中小企業を結び付けるための会社を設立した。企業の人手不足が深刻化する中、社会人として求められるスキルや企業の魅力などを学生に無料で発信する。県内の経営者との関わりを通じ、自社の業績向上以上に社員の採用や定着に悩む声を多く聞いた。会社員としての自らの経験や子を持つ母親の目線を生かして学生に寄り添い、若者が地方の企業で安心して長く働ける環境づくりにつなげる。
新会社は「NEST
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RISE(ネストアンドライズ)」で主な業務の仕組みは【図】の通り。社会人マナーなどに関する15分程度の自作動画を通信アプリLINE(ライン)の公式アカウントで発信し、登録した学生が自由に閲覧できるようにする。チラシを作成し、学生に周知を図る。
事業に賛同する地域企業からサポート料金を得て資金を確保し、各社の取り組みや特色などを学生側に提供。企業価値の磨き上げや広報支援にも応じる。学生による現地訪問や経営者インタビューを通じて両者を結び、企業をより詳しく知ってもらう。学生と企業の出会いの場をつくり、安心して就職できるようサポートするのが特徴だ。直接当事者と向き合い、きめ細かいサポート態勢の構築を目指す。■7月に合同会社設立
会社設立のきっかけは大久保さんが企業経営者の苦悩を知ったことだった。4年前に起業し、交流サイト(SNS)を活用した売り上げ向上策などを個人や企業に提案してきた。「せっかく採用したのに1カ月で退職してしまった」「離職が重なり、中堅社員が育たない」。人材の確保や育成に課題を感じる県内の社長らに多く出会った。
電話やメールでの応対、社内外の幅広い世代との対話、人工知能(AI)をはじめ急速に進むITの活用など、各社は新入社員が社会人として必要なスキルを学ぶ機会を設けているものの、十分な時間を割けない事業者もいる。大久保さんは起業前に会社員として接客や販売、集客の戦略立案などに携わった。就職を見据えた学生に自らの経験を交えたスキルを伝えて社会人への準備を進めてもらうことで、県内企業の悩みの解決に少しでも役立ちたいと考えた。
就職活動中の学生に地方の企業の詳細が十分に伝わっていないとも感じてきた。中小企業のコミュニティーなどに関わっているさいたま市の岡安直澄さん(43)とSNSを通じて出会い、地方企業の力になりたいとの思いで共感。2人で共同代表を務める合同会社を7月に設立した。
大久保さんは小学生の長女、岡安さんは小学生から大学生までの子ども4人を育てる母親。親目線で学生を見守りたいとの思いも込め、個別の悩み相談などにも対応する予定だ。
大久保さんは「『社会人0年生』の学生に多くの学びや気づきを提供したい」と意気込む。少子化を背景に企業の採用は学生優位の「売り手市場」が今後も続くとみられ、岡安さんは大手に人材が流れやすくなると懸念し、「中小企業の魅力を学生に伝えたい」と決意している。※NEST
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RISEは年内いっぱいをめどに、地域企業を対象にした研修やインタビューに無料で応じる。研修は各社従業員を対象に集客戦略やAI活用など10のテーマをそろえる。インタビューは経営者や採用担当者を想定し、取材した内容を学生向けに発信する。問い合わせはNEST
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RISE。