飲酒運転「氷山の一角」 福島県警お盆時期控え摘発強化 受刑者「バレなければ」潜む心理

  • [エリア] 福島市 郡山市
飲酒運転「氷山の一角」 福島県警お盆時期控え摘発強化 受刑者「バレなければ」潜む心理

福島のニュース


ひとたび事故を起こせば、尊い人命を奪いかねない飲酒運転。だが、福島県内では摘発者が後を絶たない。県警は飲酒運転根絶に向けた啓発活動などに力を入れるが、今年7月末までの摘発者は150人を超え、昨年同期とほぼ変わらない。飲酒機会が増えるお盆時期に入り、警察は警戒を強める。悪質ドライバーの中には飲酒運転を繰り返す者もおり、継続的な取り締まりや啓発が不可欠だ。
7月中旬、福島市南沢又の福島刑務所の一室。道交法違反(酒酔い運転)の罪で懲役10月の判決を受けた男性受刑者(44)は福島民報社の取材に、「万が一、人にけがをさせていたら大変なことになっていた」と重い口を開いた。
トラック運転手として働いていた男性受刑者は週末になると、自宅から10キロほど離れた千葉県内の飲食街へ向かい、酒を飲むのが唯一の楽しみだった。帰りは運転代行を利用することもあれば、車で一眠りしてから自らハンドルを握り帰路に就くこともあった。「バレなきゃいいだろう」と内に潜む“悪魔”がささやき、常習的に飲酒運転を繰り返していたと回顧する。
昨年のある夜。1人で行きつけの居酒屋とスナックをはしごした。「酒を思いっきり飲みたかった」。1軒目の居酒屋でビールの中ジョッキを3、4杯飲んだ後、2軒目のスナックで麦焼酎のボトルを半分ほど空けた。酩酊[めいてい]状態のまま車に乗り込み、アクセルを踏み込んだ。
運転中の記憶はない。後に警察から聞いた話では、時速100キロ近いスピードのまま電柱に正面から突っ込んだという。衝突した記憶は一瞬残っているが、すぐに眠りに落ちたのか記憶は途絶えている。朝、目が覚めると留置所の中だった。逮捕は2度目だった。
「さすがにもう(飲酒運転は)しない」と自戒を込める。一方で男性受刑者は、今のままでは飲酒運転が社会からなくならないと感じている。「罰金や執行猶予が付くなど刑が軽いと思うよ」。
県警が今年、飲酒運転の摘発者から事情を聞いた際、「少しの距離だから」「早く帰りたかった」などの理由が大半を占めたという。県警幹部は、摘発者の心理について「『自分は捕まらないだろう』と高をくくっている」とみる。摘発者は「氷山の一角」に過ぎず、常習的な飲酒運転者が「岩盤」のように一定数存在しているという。
県警本部の武藤孝雄交通部長は「飲酒運転の危険性などを知ってもらうため、周知活動や取り締まりを地道に継続していく」と強調した。■毎月22日、全署取り締まり
郡山の受験生死亡事故受け
摘発件数横ばい
県内今年5人死亡
郡山市のJR郡山駅西口駅前で1月22日、受験で訪れていた大阪府の予備校生女性=当時(19)=が信号無視を繰り返した酒気帯び運転の車にはねられ死亡した事故を受け、県警は毎月22日を飲酒運転根絶に向けた取り組みの強化日と定めた。全署が取り締まりや啓発活動を繰り広げているが、飲酒運転の摘発は後を絶たない。
県警によると、事故が起きた1月22日から7月までの間、県内で飲酒運転の摘発は152件で前年同期比7件減にとどまる。飲酒運転による事故で今年に入って5人が命を落とした。