劇団120○EN 劇と旅で福島県知って 題材の地巡るツアー企画 全国の高校、大学生ら案内 10月にプレ実施

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劇団120○EN 劇と旅で福島県知って 題材の地巡るツアー企画 全国の高校、大学生ら案内 10月にプレ実施

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福島市にまつわる創作劇を上演し、郷土の民話や歴史を守り継いでいる同市の劇団120○EN(ひゃくにじゅうえん)は、全国のファンに市内へ足を運んでもらう事業を展開する。作品に登場した場所を巡る「ルーツツアー」のプレツアーを10月に開催する。さらに、同市を題材とした作品を募集・表彰する戯曲賞を創設し、県内外の若手劇作家が市内を訪れる機会を設ける。代表の清野和也さん(35)は「『このまちに来ると面白い』と思ってもらえるような取り組みにしたい」と意気込んでいる。
劇団は福島大演劇研究会に所属していた清野さんらを中心に2011(平成23)年4月に結成された。オリジナルの作品は60本近く、一部は劇団のホームページや日本劇作家協会が運営するウェブサイト「戯曲デジタルアーカイブ」などで公開している。劇団の作品は高校生や大学生は無料で上演できることから、全国にファンも多い。2018年に日本劇作家協会東北支部の短編演劇コンクール「東北劇の陣」で優勝。2022(令和4)年には福島民報社など地方新聞46紙と共同通信が地域活性化の取り組みを表彰する地域再生大賞の優秀賞を受けた。現在は10代後半から30代の25人ほどで活動している。
新事業は来年の旗揚げ15周年を記念し企画した。同市を題材にした50作目の公演を10月25日に予定している。プレツアーは翌日に実施し、観客ら10人程度を劇中に登場した場所に案内する予定。本格的なルーツツアーは来年秋ごろの実施を見据えている。参加者は劇団の作品を上演した経験のある県外の高校生や大学生らを想定し詳細を詰めている。
福島市民にとってなじみの場所が作品に多く登場し、県外の若者らも演じている。市内渡利にある「松[しょう]齢[れい]橋」が登場する「ビー玉雨と眠たげな夏」は、都内の大学が演じた。「丑[うし]三[み]つ人[びと]」という作品は市内土湯温泉町にある「思いの滝」の伝説がモデルだ。千葉県の高校生が上演のため福島について調べ、顧問の教員から清野さんに、生徒が来訪を希望している旨の連絡があったという。
山形県出身の清野さんが大学時代、地元出身の同級生に魅力を尋ねたところ「福島には何にもない」などと言われたことが地域に光を当てる活動の原点となった。清野さんは「地元の人は気付いていなくても、本当は魅力のある場所だと外から教えてもらうことも多い。地元の人が地域を愛するきっかけになれば」と願う。交流サイト(SNS)や口コミなどによる福島の魅力発信に期待する。
県芸術文化団体連合会の杉昭重会長(74)は「こうした動きが広がれば、若者の福島への理解がさらに深まる」と歓迎し、「何らかの形で応援したい」としている。■戯曲賞を創設
戯曲賞は同市を題材とした内容に限定する。来春にも作品を募り、秋に開催予定の15周年記念公演で審査結果を発表する予定。審査員は市ゆかりの文化人に依頼する。選ばれた作品は劇団が上演する。