マダガスカルと福島の絆(中) 妊婦の健康守り抜く 女性の社会進出貢献へ 福島県郡山市出身の助産師が派遣

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マダガスカルと福島の絆(中) 妊婦の健康守り抜く 女性の社会進出貢献へ 福島県郡山市出身の助産師が派遣

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マダガスカルの妊産婦死亡率は高い。世界保健機関(WHO)の統計によると、2020(令和2)年の妊婦10万人当たりの死者数は392人で、日本の約100倍となっている。
背景に医療施設やインフラの不足、衛生面の問題がある。性に関する知識不足の影響も大きいという。若すぎる妊娠、出産は合併症のリスクを高める。
福島県郡山市出身の助産師、渡辺詩緒理さん(29)は7月末、JICA(国際協力機構)海外協力隊として、マダガスカルに派遣された。現在は首都・アンタナナリボで現地語の訓練に励む。
渡辺さんは北西部の都市・マジュンガのペザガ大学病院で勤務予定だ。母親学級を担当し、母子の健康や栄養の改善指導に当たる。対象を母親だけに限定せず、若年層に向けて性教育の大切さを訴える。望まない妊娠をなくし、女性の社会進出に貢献する覚悟だ。
「サラーマ(こんにちは)」。現地語研修の昼休みに街中まで散策に出かけた。住民らと笑顔であいさつを交わした。想像していたよりも、背丈は小さく、痩せていた。乳幼児を世話する幼い子の姿もあった。「データ以上に厳しい現実があるのだと思う。失われる命を救いたい」と思いをさらに強くする。
道ばたに捨てられたごみを目にし衛生状態の悪さも実感した。渡航後は断水や停電も経験した。赴任先では多くの困難や想定外の事態に遭遇するだろうと予想する。病院内の「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」の徹底や医療スタッフへの教育など取り組む課題が山積する。不安はあるが、選んだ道に後悔はない。「これまでの経験や知識を生かしたい。この国の発展に力を尽くす」と使命感に突き動かされる。(本社整理部・白岩祐樹)