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発電会社JERA(ジェラ)が広野火力発電所(福島県広野町)の1~4号機を解体・撤去する方針を固めた30日、住民からは「跡地を地域活性化のために活用してほしい」と求める声が上がった。ただ、具体的な利用方針や施設の撤去と利用計画を定める時期は示されていない。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による被災や各号機の廃止により活力が低下している現状を踏まえ、町民は「早急に見通しを示して」との切実な願いも抱く。
「次世代のエネルギーの研究開発の場にならないだろうか」。広野町商工会長の稲村光弘さん(63)は地域活性化に向けた跡地利用を進めるべきだと訴える。
鹿児島県の高校を卒業後、1980(昭和55)年に東京都にある発電所のプラント製造を手がける企業に就職した。その年に運転を始めた広野火発1、2号機には世界最先端の技術が盛り込まれていた。憧れを抱き続け、3号機が建設される際には自ら希望して転勤し、試運転の仕事を担った。3年間にわたり広野火発で働き、各種作業や点検で多くの人が出入りする姿を目の当たりに。「火発の町」は交流人口が増え、活気にあふれた。
だが、震災と原発事故で住民は避難を強いられた。現在、9割ほどの住民が帰還したものの、以前ほどのにぎわいは感じられない。さらに2023(令和5)年に広野火発1、3、4号機が廃止され、宿泊業や飲食業などが打撃を受けた。町は二つの産業団地を整備して企業誘致に努めているが、進出は思うように進んでいないという。
稲村さんは復興創生を進めるに向けては雇用の場を生む新たな取り組みが欠かせないとして「企業誘致を含めた対応が必要だ」と指摘する。
ただ、現時点でいつの時点で1~4号機を撤去し、跡地利用に着手するのか、計画は定まっていない。ジェラは今後、町と協議するとしているが多くの時間を要すれば、町の活力低下に拍車がかかりかねない。町観光協会長の鈴木正範さん(80)は「跡地は広大だ。町に寄り添い、早め早めに計画策定に着手してほしい。『火発の町』の歴史を踏まえ、本気になって考えてもらいたい」と願う。
町は1、3、4号機の廃止時から、跡地での二酸化炭素を排出しない新たな発電プラントの研究・実証を求めるなど、脱炭素社会に適応した電力安定供給の拠点として広野火発を維持するよう要望してきた経過がある。活用に向けた町の要望は現在も続く。遠藤智町長は撤去の方針について「聞いていない」とした上で、「地元の意向を聞き、地域への経済波及効果を生じてもらえるよう要望する」と話した。

