【変革者たれ ふたば未来学園創立10周年】③ 特色ある学び 市民性育む対話と協働

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【変革者たれ ふたば未来学園創立10周年】③ 特色ある学び 市民性育む対話と協働

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地域や社会を変革する次世代の育成に向け、ふたば未来学園は独自の学びに力を入れている。特色ある教育は、校内にある劇場型の多目的ホール「みらいシアター」での演劇教育、多様性を理解する哲学対話、地元の経営者らに生き方を学ぶリーダー学など幅広い。中高6年間で自身の思考を表現し、周囲と協力して活動する経験を積み重ね、主体的に活躍できる市民としての資質を育んでいる。
演劇教育は価値観の異なる仲間と一緒に劇を作り上げ、表現力やコミュニケーション能力を育む。開校当初から劇作家の平田オリザさんを講師に「伝える力」を培う授業に注力。現在は中学での演劇ワークショップや高校の芸術の選択科目などを充実させている。
中学のワークショップでは状況や感情を身体で表現する。高校の芸術には戯曲創作を取り入れ、音響、照明の役割や効果などを学びながら作品作りに挑む。
高校1年生は探究学習の基盤となる授業「地域創造と人間生活」に取り組む。双葉郡内を歩き、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に直面した人々の思いを聞き取り、劇に反映させる。原発事故に遭いながら津波で失った家族の遺骨を捜す住民、避難を強いられて県外の学校に通った高校生…。調査と作品作りを通して地域への理解を深め、校内で発表して共感を広げていく。
劇作家・演出家で演劇教諭の高山さなえさん(48)は「生徒は表現の在り方を模索し、作品を仕上げる中で合意形成の過程を経験していく。体を動かし、楽しみながら生きる力を養ってもらいたい」と願う。
哲学対話は中学の3年間、道徳の授業で年10回ほど行う。専門家を招き、生徒が多様な考え方を話し合う。友情と愛、権利と責任といった「唯一の正解」がないテーマで意見を交わして多様な価値観に触れ、異なる立場から本質に迫る。
リーダー学は中学2年時に地元の経営者をはじめ各分野の「変革者」の講話を聞き、統率力や指導力を学ぶ。現生徒会長の藤東佑和さん(2年)は福島市出身で、特色ある学びに魅力を感じ、中学からふたば未来学園を選んだ。地元企業の経営者から聞いた、仲間と共に試練に立ち向かう生き方が印象に残る。「集団を引っ張る精神を学んだ。生徒会長として、学校全体で新しい取り組みに挑戦したい」と刺激を受けている。