福島のニュース
福島県は地球温暖化の進行を見据え、柑橘[かんきつ]類の産地化に向けた調査に着手した。福島市の県農業総合センター果樹研究所で今年度から温州ミカンの栽培適性の検証を開始し収量や品質などを調べる。気温がこのまま上昇を続けた場合、県内の既存の主力品種となっているモモやリンゴ、ナシ、ブドウなどの収量の維持が困難となることへの危機感が背景にある。
1日の9月定例県議会総括審査会で、沖野浩之農林水産部長が山口信雄議員(自民、郡山市)の質問に答えた。
県によると、県内では経営品目として温州ミカンを生産している地域はない。政府がまとめた2022(令和4)年の特産果樹生産動態等調査でも福島県を含めた東北6県の温州ミカンの生産面積は0ヘクタールとなっている。県内での生産体制が新たに確立されれば県産農産物の多様性につながり、農業の活性化に寄与する。
県は福島市の果樹研究所の敷地内に植えた温州ミカン「日南1号」の木4本から果実を11月上旬ごろに収穫するなどし数年間かけて適性を調べる。将来的には温州ミカン以外の柑橘類の栽培適性調査も実施したい考えだ。
農林水産省などによると、このまま温暖化が進んだ場合、福島県の果樹生産の主力品種であるリンゴの栽培適地が北上し、2060年ごろには北海道の平野部となり県内の主産地の一部が適地から外れる懸念がある。温州ミカンの栽培適地も北上し2060年代には南東北まで拡大、現在の主産地の大半が栽培に適さなくなる可能性がある。農研機構は産地ごとに将来の気候変動に合わせた長期的な生産計画を検討する必要性を指摘している。

