福島のニュース
任期満了に伴い11月9日告示、16日投開票で行われる福島市長選が約1カ月後に迫った。現職木幡浩(64)=2期=、会社経営の新人高橋翔(37)に加え、元衆院議員の新人馬場雄基(32)が参戦し構図が一変した。国政与野党の枠を超えた組織戦を軸に展開したい木幡に対し、既存政党に縛られない若手や女性らへの浸透を足掛かりにしたい馬場。馬場の支持母体となってきた連合福島や立憲民主党などは早々に木幡への推薦を決めたが、重なり合う支持層からは建前と本音が漏れ聞こえる。(文中敬称略)
木幡は前回市長選に続き自民、立憲民主、国民民主、公明、社民各党から推薦を取り付ける見通し。連合福島は2日、推薦を正式決定した。全市議のうち共産党市議団3人を除く31人は、超党派で木幡を支援する「市議の会」を発足させた。重鎮市議は、復興庁福島復興局長や岡山県副知事を歴任した木幡の行政手腕を認め「JR福島駅東口の再開発をはじめ課題は山積している。市政継続こそが重要だ」と結束に動いた。
連合後援会長は、中心街の顔役である市商店街連合会長が務める。市内全域に32の地区後援会を張り巡らせ、まちづくり懇談会を重ねてきた。2期8年間で東口再開発ビルの整備に道筋を付け、ふるさと納税の年間寄付額を県内トップの21億円台に押し上げ、保育施設の待機児童ゼロを実現させた。支持者の間ではスピード感と実行力に定評があり、後援会幹部は「まちづくりでまいた種を大きく花開かせる3期目にしたい」と木幡を支える。
ただ、元衆院議員の馬場の挑戦を受け、前回のような大勝は困難とみる向きがある。連合福島は木幡推薦を決定した関連文書に「馬場氏との関わりを解消する」と明記したものの、連合に支えられている立民関係者の一人は「組織上は党を離れた人を応援はできないが、個人としては違う」と馬場を推す構えだ。木幡の政治資金パーティーを欠席した経済団体幹部も馬場支持をにおわす。
自民党市総支部は9月上旬に開いた役員会で、木幡を推薦する方向性を確認したが、現市政に距離を置いてきた県議や市議は出席を見送った。反旗を翻した格好の一人は「自民は割れる。馬場を応援するつもりだ」と口にした。
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馬場は福島市育ちとはいえ、国政選挙では郡山市などを主戦場としてきた。9月上旬の立候補記者会見で「裸一貫」と繰り返したのは、衆院議員時代に所属してきた立憲民主党を離党し政党や団体の後ろ盾がない「ゼロからの再出発」を有権者に印象づける狙いがあったとされる。
福島市民との接点を増やそうと自転車で市街地を巡り、自らの姿を交流サイト(SNS)に投稿。市内の企業や団体へのあいさつ回りを重ね、若手経営者らに支援を求めている。9月下旬には女性団体関係者ら約50人が集まる会合を訪れ、一人一人と握手を交わした。周辺からは「全国で与野党の区別なく既存政党に厳しい目が向けられている。政党色を出さない戦い方が正解だろう」との見方が出ている。
馬場擁立の背景には、有力企業の幹部やベテラン県議らの後ろ盾があったとされる。福島駅周辺のまちづくりや市西部にある先達山の大規模太陽光発電所(メガソーラー)などを巡り、経済界を中心に木幡市政への不満が高まっていると県議の一人は言う。ある団体は老朽化した施設の建て替えが長期にわたり進まず、内部からの批判の高まりを受け、馬場支援に回る可能性があるという。一方、経済団体の役員は「現職を裏切るようなまねはしない。新人が出てきて論戦が盛り上がるのは良いことだ」と馬場の立候補を歓迎する。
現市政と歩調を合わせてさまざまな事業などを展開してきた団体や企業は少なくない。「市の事業に協力してきた経過があり、木幡さんを真正面から批判できない。かといって馬場さんを表立って応援することもできない」。ある企業経営者は身の振り方の難しさを明かす。
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高橋は9月下旬の立候補予定者説明会に出席し、改めて選挙戦に意欲を示した。表明当初は「有力な新人が現れれば支援に回る」と立候補の辞退も示唆していたが、現時点では候補者間での調整には至っていないという。市内に後援会事務所を設けず、動画配信サイトで市長選について発信している。【福島市長選直近2回の結果】■前回福島市長選の開票結果(2021年11月21日投開票)当
72,018木幡
浩61無現
7,364高橋
翔33無新
無効1,458、持ち帰り0■前々回福島市長選の開票結果(2017年11月19日投開票)当
45,372木幡
浩57無新
34,503小林
香58無現
30,834桜田葉子60無新
1,858法井太閤72無新
無効919、持ち帰り1※敬称略、年齢は当時

