「国民感情と隔たり」 公明、連立離脱へ 斉藤代表、不満あらわ

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四半世紀にわたる協力関係が幕を下ろす。公明党の斉藤鉄夫代表は10日、就任したばかりの自民党の高市早苗総裁に連立政権からの離脱を伝えた。取材に応じたトップ2人はいずれも緊張した面持ち。「国民の感情とかけ離れている」「一方的に離脱を伝えられた」―。互いに不満をあらわにした。■高市総裁
一方的で残念
「より一層のけじめが望まれているのに、既に決着済みという姿勢では信頼回復はおぼつかない」。斉藤氏は記者会見の冒頭、離脱の理由は自民の「政治とカネ」の問題だと強調した。手元の紙に目線を落としながら党首会談でのやりとりを説明。緊張のせいか、紙を握る手は震えていた。
温和な人柄で知られる斉藤氏だが、選挙で「自民候補を推薦しない」、「閣外協力ではありません」などと言い切る場面もあった。
高市氏は、企業・団体献金の規制強化案への賛否を示すよう求められ「党に持ち帰って協議したい」と応じたところ、一方的に連立離脱を伝えられたと説明。「私が一人で決めたら独裁だ」と口調を強め「野党時代も含め協力してきたので大変残念だ」と付け加えた。
国会内で開かれた党首会談は当初30分程度の想定だったが、大幅に延び約1時間半に及んだ。報道陣に公開された会談の冒頭、笑顔の高市氏に対し、斉藤氏は表情をこわばらせ、会談終了後も口を真一文字に結んだままだった。
国民生活に直結する物価高対策の行方は一層不透明となった。主要争点となった7月の参院選投開票から既に3カ月近く経過。臨時国会の召集も遅れ、野党は「異例に長い政治空白だ」と非難する。高市氏は「早期に物価高対策に取り組む」として重視する姿勢をアピールするが、実現のめどは立っていない。
自民は臨時国会の首相指名選挙での高市氏選出に向け、公明の協力を織り込んでいた。だが公明が高市氏に投票しないと決め、選出が見通せない状況となった。
高市氏が首相に就いたとしても、国会運営には野党の協力が不可欠。補正予算案の成立時期は不透明だ。■福島県民
政治の安定望む
自公連立の解消を受け、県内では10日、混迷する政局に「政治空白の長期化につながりかねない」と懸念が広がった。物価高がのしかかる県民からは、一日も早い政治の安定と暮らしに目を向けた政策の早期実現を望む声が上がった。
郡山市の会社経営棚木敏彦さん(49)は「物価高で国民の負担は増している。諸課題に対応する首相を早急に決めるべきだ。政治空白をつくらず、国民にしっかりと向き合ってほしい」と願う。福島市の無職伊東仁[ひとし]さん(73)も「これからの政権運営がスムーズにいくのかが心配」と漏らした。
公明党は連立離脱の理由の一つに、自民党の「政治とカネ」問題を巡る姿勢を挙げる。会津若松市の無職管文雄さん(83)は「政治の安定化に向け、自民党には問題解決に努めてもらいたい」と注文した。一方、いわき市の会社経営古川純憲さん(71)は「(問題が明るみになった後も)公明党が連立を続けたのは党の利益を優先していたからだろう。この時期の離脱は筋が通らないのではないか」と懐疑的な目を向ける。「政策本位で連立したり、新党を結成したりと、あるべき政治の姿になればいいと思う」と語った。