大阪・関西万博 13日に閉幕 復興、魅力伝わったか 福島県と「新たな接点」

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大阪・関西万博 13日に閉幕 復興、魅力伝わったか 福島県と「新たな接点」

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閉幕が迫る大阪・関西万博には福島県内からも多くの人々が携わり、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みや福島県の魅力を伝えた。活動から「新たな接点が生まれた」と収穫を得た関係者がいる一方、「関心や注目を一過性にしない工夫が必要となる」との声も。国内外から2500万人近くが来場した国際博覧会で、福島が得たものとは何か。13日のフィナーレを前に、成果と課題を振り返る。
万博への出展・出演を通し、事業の発展や古里の盛り上げにつながる縁、出会いを持ち帰った人もいる。
「naturadistill(ナチュラディスティル)川内村蒸溜所」代表の大島草太さん(29)は5月下旬に復興庁と経済産業省による「福島復興展示」に参加。村の資源を使ったクラフトジンを展示・販売した。試飲やブレンド体験を交え、「香りで福島から世界を目指す」熱意を来場者に説いた。理念に共感して1泊2日で川内に来てくれた人もいる。大島さんは「福島の魅力を伝える仲間が増えた。地域と世界を結ぶブランドに育てたい」と力を得ていた。
同じく出展した桑折町振興公社はモモの6次化商品ゼリーが好評を集めた。理事長の石幡正則さん(72)は「開発を重ね、魅力を高める」と創意工夫を誓う。
6月中旬に3日間繰り広げた「東北絆まつり」は延べ5万4千人を集め、福島市の福島わらじまつりも来場者に響いたようだ。8月のわらじまつり期間には、福島市観光案内所に外国人観光客から前年の1・5倍、50件の問い合わせが来た。県内の訪日宿泊者の5割超を占める台湾をはじめ、米国や欧州と幅広い。
実行委員会で企画検討委員長を務める小口直孝さん(62)はわらじまつり当日、「万博に続いて見に来た」という見物客に出会ったという。「アピール効果は一定程度あった。万博の熱が冷めない内に再訪につながる仕掛けを考える必要がある」と知恵を絞る。
万博のシンボルで、世界最大の木造建築「大屋根リング」は閉幕後に北東部約200メートル分がレガシー(遺産)として保存される。郡山市の藤寿産業が加工、供給した県産スギ部材も保存箇所に含まれる。社長の西村義一さん(63)は「県産材の品質や福島県の技術力を世界に発信し、県民が古里に誇りを感じる場になってほしい」と期待する。■発信力の強化、継続課題
福島県内関係者
国際博覧会という一大行事を機に復興する被災地の姿を国内外に広めるという目的を遂げる上では、発信力の強化や継続性が課題となるとの指摘もある。
東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)の企画事業部長斉藤祐二さん(51)は7月中旬の県単独出展に携わった。この14年余りの県内の変遷などを記したパネルを持ち込んだ。「帰還困難区域がまだ、あるのか」といった観覧者の声から県内の現状と遠方に住む人々との認識の「ズレ」を感じたという。伝承館では万博で使った資料を20日まで展示している。パネルを指で示しながら「県外への情報発信を強める必要がある。さまざまな機会を捉えて取り組みを続けたい」と意気込みを新たにした。
浜通りなどの被災地を訪ね、復興や災害の教訓に触れる「ホープツーリズム」の受け入れ数は初年度の2016(平成28)年度から右肩上がりで推移し、昨年度は1万9071人に達した。ただ、見どころが多く距離のある万博会場で来場者の心をつかみ、県内に誘導するのは容易ではない。福島復興展示を仕掛けた復興庁万博班の担当者は「遠方から福島まで足を運んでもらう敷居は高い。今後も継続的な事業を検討する」としている。