福島県内の熊被害最多15人 知事、急増「非常事態」 市町村に財政・人的支援へ

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福島県内の熊被害最多15人 知事、急増「非常事態」 市町村に財政・人的支援へ

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福島県内の熊による人身事故が16日、3人(3件)相次ぎ、今年度の負傷者は年間で過去最多だった2023(令和5)年度の15人に並んだ。内堀雅雄知事は同日夕、緊急の関係部局長会議を開催。「非常事態」との認識を示した上で市町村への財政的・人的支援や、県民への情報発信を強化するよう指示した。わなの購入費補助の拡充や捕獲に派遣する麻酔銃を扱える職員の増員などを想定しており、具体策を早急に詰めて周知、実行に移す。
県によると、今年度の熊による人身事故は【表(1)】の通り。16日は喜多方市と昭和村、会津若松市で未明から早朝にかけて男性3人が熊に襲われ、負傷した。目撃件数は1038件と2023年度の709件の約1・5倍に上り、平年は目撃が減る10月も15日現在で190件に達している。
市町村向けの財政支援策としては、箱わななど熊を捕獲する用具の購入費補助の拡充を想定している。人的支援では捕獲の必要性に迫られた市町村の要請に基づき、麻酔銃を扱える県職員らを速やかに派遣する体制を整える。応対する人数を現状の2人から4人に増やす。熊捕獲のノウハウのない市町村に対し、専門家をアドバイザーとして派遣する対応も検討している。
県が行った堅果類の豊凶調査では、熊が主に餌とするブナやミズナラ、コナラの実はいずれも2年前よりも「凶作」となった。秋以降も山に乏しい食料を求め、市街地に現れる個体の増加が懸念されている。
緊急会議で、内堀知事はホームページに公開している熊被害に遭わないための10カ条の徹底を求めた。県野生動物調査専門官の溝口俊夫氏は、餌不足で腹をすかせた熊は冬眠に入る時期が遅れる傾向があると指摘。人なれした熊は食べ物の在りかなどを学ぶ習性があり「柿や栗などの誘因物を除去し、通学路やお年寄りの散歩コースなどで警戒を強める必要がある」と訴えた。
県は9月11日から中通りと会津地方に発令中の「出没警報」、浜通りへの「出没注意報」を12月15日まで継続し、最大限の警戒を促している。県教委は9月30日付で市町村教委に熊対策マニュアルの参考資料を配り、学校ごとのマニュアル策定を依頼している。県教育庁健康教育課の担当者は「各校の実態に合わせた内容とし、児童生徒の安全につなげる」としている。
県は17日、会津若松市役所河東支所で被害防止に向けた緊急連絡会議を開く。会津地方の13市町村や各警察署の担当者、学校関係者らが集まり、熊出没時の対応を協議、確認する。■熊被害に遭わないための10カ条(1)日の出前、日没後は徒歩での外出を控え、日中も鈴など音の出る物を携行する(2)通学路、お年寄りの散歩コースの安全を再確認する(3)河川敷が熊の移動ルートや潜み場所。やぶなどで見通せない河川敷には昼夜を問わず近づかない(4)犬の散歩時に人身事故が起きている。やぶや林で見通しの悪い場所は極力避ける(5)住宅や敷地で物音がしても不用意に外に出ない、窓を開けない(6)人気のない畑や果樹園などを見回る際は車両を使う。夜間の見回りはしない(7)今秋の熊は空腹。柿や栗など未利用果樹や野菜の残さ、配合飼料などに誘われる。戸締まりに注意する(8)今秋のキノコ狩りはリスクが非常に高い。鈴などを携行しても命懸けになる(9)林道補修や架線点検など山地作業時、河川敷の刈り払いなどでも事故が発生。出没状況を確認し、リスクが高いと判断したら中止(10)登山やサイクリング、キャンプなどの野外活動、山間部の名所旧跡の観光、緑の多い公園の散策はリスクが高いと判断したら中止