福島のニュース
初の千円超えの福島県内最低賃金が適用となる来年1月1日まで3カ月を切り、県内の中小事業者は賃上げの原資確保に向け、経費削減や業務効率化に追われている。設備投資を促し人件費を調達するための業務改善助成金の申請が急増し、窓口となる福島労働局への問い合わせが相次いでいる。経営者の対応は「待ったなし」の状況で、機械導入による省力化を進める企業がある一方、小規模事業主からは「設備投資は簡単ではない…」との苦しい声も上がる。
業務改善助成金は事業所内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上につながる設備投資などをした際に費用の一部を最大600万円支援する制度。福島労働局への申請件数は【グラフ】の通り。
今年4~8月は前年同期比約1・7倍の197件。9月5日に福島地方最低賃金審議会が1033円への改定を労働局に答申する前だったが、全都道府県で時給千円超への公算が大きくなる中、大幅な引き上げを見越して対応した企業が多いとみられる。
9月末時点で見ると、今年は前年同期より86件少ない279件だが、昨年は最低賃金の改定が10月5日だったため直前の9月に申請が重なった。今年は今後さらに増える可能性がある。
近年は飲食業や小売業での活用が目立ち、注文用タブレットや自動精算機の導入例が多い。福島労働局の綿貫直労働基準部長は「助成金への注目度は高い。審査に一定の時間がかかるため、駆け込みではなく、ぜひ早めに申請してほしい」と呼びかける。
一方、容易に利用できない企業もある。県南地方で正社員2人とアルバイト15人を雇う印刷関連業の経営者男性(68)は「助成金は選択肢の一つだが、一定の持ち出しがあると簡単には踏み出せない…」と打ち明ける。
商圏は人口減少が続く地元町村で、売り上げは右肩下がり。資材高騰などで既に赤字の月もあり、収益を高めるため、価格転嫁も検討したが「顧客が離れかねない」と苦慮している。助成金だけでなく、持ち出しのない給付型支援の充実を求めている。■9月1日現在福島県求人時給
6割、改定額届かず
分析用求人ビッグデータを提供する株式会社フロッグ(東京都)によると、福島県の求人で時給が改定後の1033円に届いていない割合は9月1日現在、60・40%だった。全国平均の46・38%を上回り、47都道府県で4番目に高い。
前年同期に比べると、17・68ポイント上昇した。改定の引き上げ幅が過去最大の78円(8・2%)増になるのを踏まえ、対応が必要な求人数が増えたとみられる。
業種別で改定後の最低賃金を下回る割合は「販売・接客・サービス」が74・09%で最も高く、「製造・工場・化学・食品」が73・27%、「ファッション・アパレル・インテリア」が70・19%となった。
ハローワークのウェブサイトや民間求人情報サイトに掲載された県内のバイトまたはパートの求人計7288件を分析した。
福島労働局は各労働基準監督署・ハローワークと連携した説明会、ポスターの活用などで最低賃金改定への周知を進めており、業務改善助成金を含めた各種支援策の活用も呼びかけている。業務改善助成金の問い合わせは雇用環境・均等室へ。

