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福島県内で熊の目撃や人身被害者数が過去最多となる中、県は緊急対策として鳥獣対策の専門家を派遣し、出没要因の洗い出しや市街地出没時の迅速な現場対応につなげる。捕獲用のわなや撃退スプレーの貸与といった支援も展開し、人身事故の未然防止に努める。県は24日、関連経費2972万円を盛り込んだ2025(令和7)年度一般会計補正予算を23日付で専決処分したと発表した。
県が公表した緊急対策は【下記】の通り。人里に寄せ付けない「熊の人慣れ」対策と住民の気の緩みから生じる「人の熊慣れ」対策を両輪で進める。
10月中に鳥獣被害対策を専門に請け負う複数の事業者を選定し、業務委託契約を結ぶ方針。委託業者を目撃が相次いでいる地域に派遣し、出没要因の分析やわなの有効な設置方法などを助言する。市街地に出没した場合、駆除までの対応手順の指導も担う。
10月下旬から11月末まで、県内7カ所の地方振興局に配置している89人の鳥獣保護管理員らを動員し、里山のパトロールに乗り出す。出没の危険性が高い場所を早期に特定・周知し、必要に応じて花火による追い払いも実施する。
近年、熊の出没が相次いでいる市町村に対しては、県が用意した箱わなを貸し出す。撃退スプレーも数百本を新たに購入し、地方振興局に配備する。出没が懸念される集落などに迅速に提供できる体制を整える。
「人の熊慣れ」対策としては、市町村と連携して遭遇を回避するための注意点を広報する。
今年度の熊の目撃件数は15日現在で1038件となり、これまで過去最多だった2023年度の709件の約1・5倍で推移。人身被害は14件17人(24日現在)に上る。このうち、約半数の8人は10月に入ってから負傷している。
今秋は熊の餌となるブナやミズナラ、コナラの実が「凶作」と予想され、今後も餌を求めて市街地に出没することが懸念される。
県は12月15日まで、中通りと会津地方に「出没警報」、浜通りに「出没注意報」をそれぞれ発令している。県警は熊出没に関する通報があった場合、各市町村に情報提供した上で現場周辺のパトロールを強化し、住民に注意を呼びかけている。
県財政課によると、熊対策に特化した補正予算を年度途中で専決処分するのは「極めて異例のケース」という。県自然保護課の加藤竜主幹は「県内の熊による被害状況は非常事態と認識している。市町村は事業を活用して対策を強化し、県民は熊に遭遇しない対応をお願いしたい」と話している。【県の熊被害防止緊急対策事業の主な内容】■人的支援・鳥獣対策専門家の市町村派遣による出没要因の分析、対策の実施・市街地出没時の現場対応支援・各地方振興局に配置している鳥獣保護管理員らによる里山周辺のパトロール強化■財政的支援・対策に有効な箱わなや撃退スプレーの貸し出し・熊を寄せ付ける原因となる未利用果樹の伐採、河川敷の刈り払いに必要な資機材の提供■情報発信・新聞広告で被害に遭わないための対策や行動をまとめた「10カ条」を掲載・市町村を通じて、広報紙や回覧板で継続的に注意喚起を促す

