【2025福島市長選 県都の争点】㊤ 駅前再開発 にぎわい期待と不安 出店呼び込む仕掛けを

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【2025福島市長選 県都の争点】㊤ 駅前再開発 にぎわい期待と不安 出店呼び込む仕掛けを

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■立候補予定者
中心市街地活性化の考え方【木幡浩氏】東西拠点の形成、新自由通路の整備など東西一体のまちづくりを推進【馬場雄基氏】再開発ビルの早期完成。東西で人の動線、回遊性を意識した計画策定【高橋翔氏】民間企業、団体と連携を図り、福島駅前のオフィスから新産業を創出
任期満了に伴い11月9日告示、同16日投開票で行われる福島市長選は、告示まで2週間となった。JR福島駅周辺は東と西にそれぞれ空き地が広がり、再開発の行方に注目が集まる。西方の先達山に目を移すと、大規模太陽光発電所が商業運転を開始した後も、反発する市民との溝が埋まらず、再生可能エネルギーとの共生の在り方が問われる。3期目を目指す現職木幡浩氏(65)、元衆院議員の新人馬場雄基氏(33)、会社経営の新人高橋翔氏(37)による論戦が見込まれる中、市民はどのような将来像に1票を託すのか。市勢を占う注目の現場を歩いた。
福島駅東口の駅前通りに面した整形靴・コーヒー専門店「ヴェアクシュタット
オオゼキ」。道路を挟んだ向かい側が再開発エリアだが、再開発ビルの開館時期は、建設資材の高騰に伴う設計見直しを理由に当初計画から先送りされて4年先。店主の大関悠人さん(41)は期待と不安が去来する。「再開発で本当ににぎわいが生まれるのか」
大関さんは関東地方の大学を卒業後、ドイツに渡り7年間、整形靴やインソールの製作を学んだ。その後にUターンし、6代にわたって地域に愛されてきた先祖代々の理容店を改装。2023(令和5)年春に店を構えた。
「いつか地元に戻って靴屋を開く」という10代からの夢はかなえた。だが、駅前の顔だった中合福島店は2020年8月末に閉店し、駅前通りを歩く人はまばら。アーケードが架かっていた頃の活気を思い返すと、もの寂しく映る。当時は書店や飲食店が軒を連ね、若者が足しげく通う商業ビルもあった。
市によると、駅前通りの通行量(歩行者・二輪車)は平日で6881人。中合が閉店する前年の2019年は9139人で、単純計算で3割弱減ったことになる。
中合跡地などに建つ再開発ビルの複合棟は、公共エリアに最大1500人収容のコンベンションホールが入る。民間エリアにはカフェや物産館、シェアラウンジ、オフィスを設ける。民間の住宅棟と駐車場棟が隣接する予定だ。
大関さんが店を開けた2年前から街の景色は変わらない。再開発ビルは地元商店の追い風になると捉えるが、民間エリアの商業機能に物足りなさを感じている。「たくさんの個性ある商品を見て、歩いて、楽しめる場所にしてほしい」。市長選の立候補者に求めている。







福島駅西口のイトーヨーカドー福島店が閉店して1年が経過した。取り壊されて往時の面影はない。ほぼ更地になったが、跡地利用の方向性が示されていない。近くで暮らす江川純子さん(80)は「買い物が不便になった」とこぼす。イトーヨーカドーに行けば食料品、日用品、衣料品、雑貨まで全て手に入った。
高齢者は買い物に出ようにも、その足がない。市は2月から、駅西口を起点にスーパーを経由する循環バスの実証を始めた。1日6便で、利用者は1日当たり平均22人程度。想定の30人を下回る。江川さんは「買い物した荷物を運んでバスを乗り降りするのは負担が大きい」と足が向かない理由を明かす。
市は7月、JR東日本東北本部と新たな駅東西自由通路整備の調査検討に向けた覚書を締結した。江川さんは、東口側の再開発からのにぎわいを西口側にまで波及させてほしいと願う。「商業施設の出店を呼び込む仕掛けを考えてほしい」
市長選の論戦で問われることになる。■福島駅東口周辺の主な経過2020年8月
中合福島店が閉店2021年6月
再開発準備組合が再開発ビルの2026年4月開業などを盛り込んだ事業計画を公表2022年8月
建設予定地にある辰巳屋ビル、平和ビルなどの解体工事が始まる2023年5月~2024年5月開業時期や設計、事業費の見直しなどが相次ぎ、開業見通しが2029年度までずれ込む2025年7月
再開発ビルの基本設計を公表■福島駅西口周辺の主な経過2024年5月
イトーヨーカドー福島店が閉店2025年1月
駅構内の商業施設パワーシティピボットの一部店舗が閉店




4月
イトーヨーカドー福島店の建物解体が始まる




7月
市とJRが新たな駅東西自由通路整備の調査検討に向けた覚書を締結