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任期満了に伴い12月14日告示、同21日投票で行われる福島県相馬市長選は、市議の只野敬三氏(60)が立候補の意思を固め、既に出馬を表明していた元副市長の阿部勝弘氏(53)との新人同士の選挙戦が濃厚となっている。現職の立谷秀清氏(74)=6期=は9月、今期限りでの退任を周辺に示唆していたが、後援会関係者に正式に伝達したのは約1カ月後。後継に指名したのは周囲から目されていた阿部氏ではなく、只野氏だった。水面下には、後継者選びを巡る関係者の激しい駆け引きがあった。
阿部氏は立谷氏の就任2期目だった2006(平成18)年から11年にわたり秘書課に在籍した。事務方トップの企画政策部長、副市長を歴任するなど立谷氏の信頼を得ていた。このため、周囲では「後継は阿部」との見方が大勢だった。
阿部氏は9月11日、市長選に立候補するとして立谷氏に辞表を提出した。立谷氏は複数の関係者に「(次の選挙に)出るわけにはいかない」などと退任を示唆した。だが、全国市長会長を務めるなど、国と太いパイプをつくってきた手腕を評価する支援者や市議の一部からは、続投を求める意見が出た。一方、阿部氏と立谷氏を「戦わせられない」と、勇退を促す声も上がった。立谷氏は支援者と調整するとして、熟考の構えを見せるようになった。
一部の市議らは阿部氏の辞表の提出が急で、後援会とも十分な話し合いがなされていない、などと反発した。立谷氏の続投も視野に入れつつ、別の候補者の選定に動いた。立谷氏から退任の意向を最終確認すると23日、後援会の緊急会議の席上で市議7期目のベテランで政治経験が豊富な只野氏の擁立を諮り、了承された。後援会の決定を重視するとして、立谷氏も只野氏を後継に指名した。
会議終了後、立谷氏は福島民報社の取材に、自身の年齢に近い只野氏の方が「スムーズに次の世代に(市政を)託せる」と理由を語った。
市長選まで2カ月を切り、阿部、只野両氏は支持獲得に躍起になっている。阿部氏は「現市長のリーダーシップを横で学んできた。市政運営と志を引き継ぐ」と述べた。只野氏は「24年間の政治姿勢を尊敬し学んできた。人脈と政治力を市の財産として引き継ぐ」としている。

