【2025福島市長選 県都の争点】㊦ 先達山 再エネ共生の考え方 太陽光問われる共生 諦め、憤り…曇る市民感情

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【2025福島市長選 県都の争点】㊦ 先達山 再エネ共生の考え方 太陽光問われる共生 諦め、憤り…曇る市民感情

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福島市西部にある先達山―。大規模太陽光発電所(メガソーラー)で全国に知られるようになった。三角形の切り土面と、9万5千枚の太陽光パネルが秋の夕日に照らされる。商業運転は9月末に始まった。
先達山の麓に近い市内町庭坂で野菜作りを日課にする無職星一夫さん(75)にとってメガソーラーは見慣れた景色になった。「今は何となく見守るだけ。土砂災害が起きなければいいが…」。諦めに近い感情という。
15年ほど前、吾妻山麓を一望できる場所に心引かれて畑を借りた。メガソーラーの造成工事で山肌がむき出しになった違和感は忘れられない。「さすがに良い気分はしない。どこでも開発して良いわけではないだろう」。再生可能エネルギーとの付き合い方に思いを巡らせた。








先達山の発電事業者AC7合同会社(福島市)が法令上の手続きに基づき、60ヘクタールを開発した。国の固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、2040年まで売電を続ける見通しだ。その後、どうなるのか現時点では明らかにされていない。
FITが2012(平成24)年に始まって以降、県内で太陽光発電所の建設が急増した。県は「再生可能エネルギー先駆けの地」として、県内エネルギー需要に占める再エネ導入割合を100%にする目標を掲げ、導入促進事業を展開している。
国の電力統計調査によると、今年5月現在で最大出力合計値は1926メガワットに上り、都道府県別でトップ。山間部にまで開発の手が伸び、森林法に基づく県の林地開発許可は2013年度を皮切りにこれまでに計116件、計1488ヘクタール。福島市内では先達山を含めて26カ所でメガソーラーが設置され、いずれもFITの認定を受けている。







太陽光発電所を巡り、住民とのトラブルは全国で相次ぐ。資源エネルギー庁によると、相談件数は2016年10月~今年3月末で1270件。近年は山林の開発が進み、増加傾向にあるという。先達山は山並みの景観のみならず、日差しがパネルに反射する光害や土砂崩れの誘発を懸念する声が絶えない。
市は今春、再エネ施設の適正な管理と抑制に向けた新条例を施行した。出力10キロワット以上の太陽光発電施設を対象に、市面積の約7割を新設の禁止区域に設定した。区域外の場合でも許可制を導入した。担当者は「市としてできる最大限の規制措置」と話す。
市内で反対活動を続ける市民団体「先達山を注視する会」共同代表の梅宮毅さん(50)は「吾妻山は先人が守り、多くの学校の校歌で歌詞に盛り込まれている。住民の痛みを伴いながら開発を進めるものではない」と憤る。「吾妻山の景観と自然環境を守る会」会長の矢吹武さん(83)も「先達山の景観は壊され、地域住民との合意も不十分だった。これ以上、『第2の先達山』を生み出してはいけない」と同じ思いだ。
再エネとの共生の在り方が、論戦で問われている。■立候補予定者
再エネ共生の考え方【現職・木幡浩氏
65】再エネ新条例でメガソーラーなどの設置抑制、適正管理を徹底。地域共生型の再エネ設備を活用【新人・馬場雄基氏
33】自然破壊を伴う乱開発を制限。法改正の働きかけ。景観や防災に配慮し、地域に還元する形で推進【新人・高橋翔氏
37】先達山の景観回復、事業撤回へ訴訟も辞さない。「宇宙太陽光発電」の実現で新たな資源を確保