福島のニュース
26日に富山市で行われた全日本合唱コンクール全国大会中学生部門は、混声の郡山一が3位相当の金賞・富山市教委賞を受け、福島県勢が大舞台で輝いた。■混声・金賞富山市教委賞郡山一
息遣いで繊細に祈り表現
2大会連続で混声3位に輝いた郡山一の36人は、息の使い方を大切に、祈りの思いを歌った2曲を繊細に響かせた。
「夕暮」は谷川俊太郎さんの詩が題材。身近な自然現象である夕暮れを描いているが、人生や物事の終わりなど壮大なテーマを想起させる楽曲だ。「Salve
Regina(ごきげんよう、女王)」はラテン語の宗教曲で、マリアへの感謝、導きを求める切実な思いが込められている。
歌詞の解釈を深めていくうち、どちらの曲も自分(人間)のちっぽけさや、祈りの感情が込められていると気付いたという。ぬくもりがありながら、どこか厳かで繊細な両曲を歌い上げるため、ブレスの位置や声にかける圧力、音の終わり方など息を意識した練習を繰り返してきた。
遠藤花純部長(3年)は「最後にふさわしい、堂々とした姿で歌えた」と振り返った。受賞を受け、顧問の星えりか教諭は「めげずに頑張ってきた子どもたちへの贈り物。素直に喜びたい」とほほ笑んだ。■「個」磨き難曲響かせる
同声・銅賞
郡山五
郡山五はエントリー人数が同声で最も少ない17人だった。一人一人が歌声の強弱など表現を極め、難曲を堂々と歌い上げた。
同校が選んだ「風紋」は、構成が複雑。パートが細かく分かれて、1人で一つの旋律を歌う場面もあり、それぞれが担う責任がより大きい。フォルテなど力強い表現が課題で、発声方法を見直してきた。文化祭の準備や部員の体調不良で十分に練習できない期間もあったが、3年生4人が中心となって前向きに歌声を磨いてきた。
横江風音[かさね]部長(3年)は「全員で舞台に立てて本当にうれしい。もっと良くしたい部分はあるが、精いっぱい歌えた」と話し、顧問の栗城美佳子教諭と笑い合った。■曲調の違い歌い上げる
同声・銅賞
二本松一
二本松一の24人は曲の魅力を追究し、5大会ぶりのステージで堂々とした歌声を披露した。
3月の声楽アンサンブルコンテスト全国大会などでも親しんできた外国語の曲に挑んだ。神をたたえる輝かしい「Gloria(栄光の賛歌)」、リズムが特徴的な「Sanctus(感謝の賛歌)」、色彩感のある「Agnus
Dei(平和の賛歌)」の曲調の違いを豊かに表現した。
互いの声を調和させ、会場全体を包み込む響きを目指した。顧問の三浦唯教諭からの指導に加え、生徒同士での助言や自主練習にも重きを置いたという。
鹿又笑[え]夏[な]部長(3年)は「悔いのない演奏ができた。金賞の目標を後輩たちに託したい」と語った。■声色極め旋律に一体感
同声・銅賞
郡山七
郡山七の18人はラテン語と日本語の楽曲それぞれに合った声色を極め、一体感あるハーモニーを届けた。
ラテン語曲は生徒にとってなじみの薄かったミサ曲。今年度から顧問を務める白石博美教諭が以前、同校勤務時に合唱部で取り組んでいたといい、音の重なりなどを意識し、神への感謝を力強く音楽に込めた。
日本語曲は昨年度に続き、合唱曲で数多くの名作を生み出した作曲家故三善晃さんの作品に挑戦した。病のため若くして亡くなった詩人立原道造の絶望感のある難解な歌詞を読み込み、多感な中学生らしさを大切にして歌い上げた。
小池くるみ部長(3年)は「みんなで追い求めた声色を達成できた」と充実感をにじませた。■県勢以外の成績
◇混声▽金賞・文部科学大臣賞=滝ノ水(愛知)▽金賞・富山市長賞=府中四(東京)▽金賞=専修大松戸(千葉)群馬大共同教育学部付(群馬)▽銀賞=斐川西(島根)伏見(北海道)綾川(香川)宮崎大教育学部付(宮崎)▽銅賞=安岡(沖縄)愛媛大教育学部付(愛媛)浜寺南(大阪)神戸大付中等教育学校前期課程(兵庫)
◇同声▽金賞・文部科学大臣賞=大綱(神奈川)▽金賞・富山市長賞=清泉女学院(神奈川)▽金賞・富山市教委賞=豊島岡女子学園(東京)▽金賞=向陽(埼玉)北上ミューズコーラス隊、矢巾北(岩手)東白石(北海道)▽銀賞=中標津・広陵・計根別学園・上春別・上西春別(北海道)出水、日吉(熊本)栄東(埼玉)四天王寺(大阪)武庫川女子大付(兵庫)▽銅賞=滝ノ水、萩山、聖霊(愛知)出雲一(島根)高知学芸(高知)■重ねた経験、生徒導く
教員2人指揮で鼓舞
中学生部門では生徒、学生時代に全国大会を経験した教員が指揮者として大舞台に戻り、生徒を導いた。
二本松一の顧問の三浦唯教諭は郡山二中、安積黎明高、福島大に在籍した計10年間、毎年全国大会に出場。中学と高校で部長、大学で学生指揮者を務め、計5度の日本一に輝いた。指揮者としては初の大舞台となり、「生徒たちに感謝したい。今後も福島の合唱界を支えていきたい」と決意を新たにした。
「合唱王国ふくしま」の立役者の一人である県合唱連盟の小針智意子副理事長に郡山二中生の時に顧問として出会い、音楽の楽しさや難しさを学んだ。「次の世代に還元したい」と音楽教師を志した。2016(平成28)年度に福島県教諭となり、教師10年目に念願のステージに立った。
昨年に続き郡山一を指揮した星えりか教諭も指導者として晴れの大舞台を目指した一人。安積黎明高では三浦教諭の2学年下だった。星教諭は「(三浦教諭は)同志のような存在。指揮者として同じ大会に臨め、これ以上ない幸せを感じた」と笑顔を見せた。

