福島のニュース
JR東日本は27日、利用者が少ない地方路線の2024(令和6)年度の収支を公表した。開示した36路線71区間の全てで赤字だった。福島県内では昨年度と同様、常磐線、水郡線、只見線、磐越西線、磐越東線の5路線12区間が該当。このうち赤字額は8区間で拡大した。県などは対策協議会を組織し、乗客増や地域活性化に向けた施策を講じているが、赤字路線の改善は進んでいない。来年は大型観光企画ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)本番を控えており、関係者は企画列車の運行などに力を注ぐ。
県内関係で公表された平均乗客数2千人未満の5路線12区間の収支状況と赤字額の増減、1日平均の乗客数などは【表】の通り。12区間のうち8区間で前年度より赤字額が拡大した。区間別の赤字額は、常磐線いわき―原ノ町間の32億9200万円が最も多く、水郡線磐城塙―安積永盛間の10億8千万円、只見線只見―小出(新潟県魚沼市)間の10億2400万円と続いた。営業費用に対する運輸収入の割合を示す「収支率」が最も低かったのは、磐越西線野沢―津川(新潟県阿賀町)間の1・3%だった。
只見線の会津川口―只見間など4区間は収支が改善した。ただ、県などによると、今年2月の大雪で長期間運休したことが要因という。
県や沿線自治体などは各路線の活性化対策協議会を組織し、赤字路線の利活用を増やすための取り組みを進めている。県生活交通課は「乗客数が増えた区間もあり、一定の効果が出ている」とするが、人口減少が進む中、首都圏などやインバウンド(訪日客)の需要をいかに取り込むかが鍵となる。
来年のDC本番に向け、同課の佐藤知憲課長は「魅力的な企画列車の運行や自治体の受け入れ環境の整備を進めていく」と話す。JR只見駅前にある只見町インフォメーションセンターで働く吉津てるみさんは、「来た人へのおもてなしを強化したい」と力を込めた。■JR東管内
36路線71区間赤字
JR東日本が開示した赤字の36路線71区間の運輸収入は約62億円で、運行にかかった営業費用は約853億円だった。収入から費用を差し引いた赤字総額は約790億円となり、前年度よりも約33億円、収支が悪化した。コロナ禍で先送りした線路の修繕費用がかさむなどし、47区間で悪化した一方、インバウンドの増加などにより24区間で収支が改善した。しかし、JR東の担当者は「短期的に利用が回復しても、少子化や高齢化で長期的には右肩下がり」としている。

