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福島県民の文芸活動に光を当てる第78回県文学賞の受賞者が決まり、主催する福島民報社と県、共催の県教委が27日発表した。全5部門のうち、エッセー・ノンフィクション部門ではり師・きゅう師・あんまマッサージ指圧師渡辺健さん(57)=二本松市=の「言霊の幸[さき]わう国で」、詩部門で無職斎藤和子さん(82)=南相馬市=の「美し森と海風」、短歌部門で会計年度任用職員(県畜産研究所)桑原三代松さん(76)=伊達市=の「山祇[やまつみ]の声」、俳句部門で無職茂木佐貴子さん(71)=福島市=の「桜蘂[しべ]降る」が正賞(文学賞)に輝いた。
渡辺さんは自身の体験(視覚の喪失)を丁寧にまとめた。読者を引き付ける魅力があると審査委員の意見が一致した。母三一子[みいこ]さんも2023(令和5)年の第76回県文学賞で同じエッセー・ノンフィクション部門の正賞を受けている。
斎藤さんは東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされ、故郷の浪江町への思いや祈りをつづった。詩風を含めて秀逸だったとたたえられた。
桑原さんは畜産に携わる仕事や生活で湧き上がる思いをまとめた。安定した表現力と起伏ある構成力に優れ、個々の作品の場面に力があると評された。
茂木さんは母を介護し、看取[みと]った経験を凝縮させた。日常の小さな所作や景色が、命の重みと優しさを帯びて立ち上がってくるとの意見が上がった。
県文学賞は1948(昭和23)年度の創設。正賞は県内文学界で最高の栄誉とされる。今年度は5部門に298点(前年度比48点増)が寄せられた。青少年の部(中学生~20歳未満)は124点(同68点増)で、青少年奨励賞には5部門で計9人が輝いた。
表彰式は11月3日に福島市の杉妻会館で行う。■身が引き締まる思い
渡辺健さんの話
初の挑戦で正賞を頂き、驚くとともに身の引き締まる思いだ。作品は家族に宛てた感謝の手紙のような気持ちで執筆した。2年前に同じ賞を受けた母が喜んでいる姿に胸がいっぱいになった。■悲しむ被災者の力に
斎藤和子さんの話
積み上げてきた詩の創作が認められ、うれしい。東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の被災者は、今も悲しみを背負って生きている。この作品が、そうした人の力になってほしい。■短歌で表現し続ける
桑原三代松さんの話
今までで一番の自信作を応募できた。挑戦4回目で正賞を頂くことができ、とても光栄に思う。これからも短歌を通し、自分の人生や自然の素晴らしさなどを表現し続けていきたい。■今後も思い詠みたい
茂木佐貴子さんの話
わずか17文字にその光景や心情をどう表現しようか。奥深い面白さが新鮮で俳句を始めた。母への思いをまとめた今回の作品は初の応募。驚いている。今後も日々の思いを詠んでいきたい。

