福島のニュース
生活圏を含む熊による人身被害の増加を受け、福島県が緊急対策として始めた「頻出地域」への専門家派遣事業に、1週間弱で中通りと会津地方の約20市町村から要請があった。熊被害への市町村の強い危機感が改めて浮き彫りとなる一方、人員や予算には限りがあり、全ての要請に対応できない恐れが出ている。従来は想定されなかった被害が相次ぐ中、地域の実情に応じた対策をどう打ち出すかが課題となっている。
県によると、派遣事業は24日に市町村からの要請受け付けを始め、29日で締め切った。熊の目撃情報や人身被害が著しい地域に専門的な知識・経験を持つ人材を送り込み、住民らと共に地域を巡る。熊の出没につながる要因を洗い出し、必要な対策を助言する。
県は東北野生動物保護管理センター(仙台市)など熊の生態に詳しい三つの民間事業者に事業を委託。(1)浜通り・中通り(2)会津地方北部(3)会津地方南部―を分担して受け持たせている。30日は第1弾として福島市在庭坂地区に派遣した。
派遣順は目撃情報や人身被害の多さなどから、緊急性を考慮して決めている。1件の対策地域で活動するのに半日程度かかるため、1日に対応できる件数は限られる。熊は通常、12月中旬ごろとされる冬眠前まで活発に活動するため、県は11月中旬には全要請への対応にめどを付ける方針。ただ、受託先の人繰りや市町村との調整が必要なため、達成できるかは微妙な状況だ。
県自然保護課の担当者は要請件数を想定以上とした上で「『これまでの熊対策では足りない』との市町村の危機感の表れ」と受け止めている。「県内の今年の目撃数、人身被害数とも過去最多を記録している。早急に要望に応えられるよう力を尽くす」としている。
県の緊急対策は熊を生活圏に寄せ付けない「熊の人慣れ」対策、気の緩みからくる「人の熊慣れ」対策を両輪とし、関連経費約3千万円を23日付で専決処分した。専門人材の派遣は熊を寄せ付けず、住民に注意を喚起するのが狙い。

