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「熊を寄せ付けるので切った方がいい」。30日に福島市在庭坂地区で実施した県の専門家緊急派遣事業では、委託を受けた合同会社「東北野生動物保護管理センター」(仙台市)の今野文治主席研究員が、熊を引き寄せる柿や栗などの「誘引木」の伐採を地元住民に推奨した。持ち主らと協議した上で今後、県が伐採を支援する方針。
今野研究員によると、たわわに実った柿は熊の好物。落果した後は熊にとって「楽に食べられる」餌になる。「誘引木」のうち、収穫予定のない木や集落に近い木などを選び、早急に伐採すべき木として印を付けていった。
ごみ捨て場も見て回った。生ごみなどは回収日に出すように住民間で徹底するなど注意点を確認した。花火による追い払い方法の指導もした。「熊は渋い柿を食べない」「猿のいる場所に熊は出てこない」といった口伝は、科学的根拠に基づかない情報だとして住民の認識を改めながら歩みを進めた。
市によると、300件を超える市内での熊目撃件数のうち、在庭坂地区周辺が40件ほどを占める。30日も住宅から数十メートルの木の下で熊のふんが見つかった。
参加した庭塚北部区長の阿部良重さん(67)は在庭坂では住民の高齢化が進み、実がなっても収穫されない木が多いと指摘する。その上で「外に出るのも怖いと感じる住民がいる。収穫も伐採も難しい場合があり、県が支援してくれるのはありがたい」と述べた。■識者
遭遇時は防御姿勢を
福島大食農学類の望月翔太准教授(野生動物管理学)によると、熊は人間と遭遇した場合、顔周辺を狙ってくる傾向がある。かがんでうずくまり、両手を頭から首にかけて抱え込む防御姿勢を取るよう呼びかけている。望月氏は「人の熊慣れ」が原因で、山林に入って負傷するケースが多いと指摘。望月氏は大きなけがを負わないために「入山する前に爆竹を鳴らしたり、火薬銃を持参したりするなどの対策を徹底してほしい」と警鐘を鳴らしている。

