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福島市で30年近く製造関連業を営んできた山口薫さん(64)は、幅広い人が3Dプリンターなどのデジタル機械や工具を利用できる共有作業場を市内に設けた。若者が実力を試したり、自動化を見据える事業者が機械導入を検討したりできる。大手の撤退などで、ものづくりの基盤が弱まり、人材流出が進むと危機感を抱き、次世代を育てようと開設した。「スタートアップ企業の設立を盛り上げたい」と意気込む。■デジタル機械、工具利用可
「ふくしまみんなのラボ」と名付けた施設は福島市渡利にある。機能の異なる複数の3Dプリンターをはじめ、レーザー加工機、産業用ロボットなどがずらりと並ぶ。同種の施設は「FAB(ファブ)施設」と呼ばれ、利用料を支払えば自由に利用できる。
昨年6月、はんだ付け装置製造販売の会社「FAシンカテクノロジー」の社長を退いた。なりわいを支えてくれた地域に恩を返したいと考えていたところ、市内で大規模な製造工場の閉鎖が決まるなどし、「優秀な若者がますます都会に流れてしまう」と危機感を募らせた。人手不足に悩む企業の業務効率化も容易ではないと肌で感じてきた。
自動化に向けた機械購入は1台当たり最低100万円単位の経費がかかる。導入を気軽に試せる場があれば人材定着の一助になるのではないかと一念発起し、開所に必要な機器を自費で用意した。
山口さんは開所に合わせ、自助具を3Dプリンターで出力するためのインストラクター資格を取得した。3Dプリンターでは障害者や高齢者の生活を助ける「自助具」も作れる。8月の開所以降、製造や介護以外の企業や団体から販促グッズの制作依頼も受けた。
福島市で子育てサロンを運営する平塚いずみさん(38)はイベント時に使うコースター作りなどに活用し、「オリジナル品を少ない数から作れる」と感謝する。福島市産業雇用政策課の佐藤尚子創業推進係長(42)は「幅広い方法で活用でき、可能性を感じる施設。市として一緒にできることを考えたい」と語る。
山口さんはワークショップを定期的に開き、まずは施設の認知度を高めたいと準備を進める。「ものづくりに頑張る人を応援し、福島を元気にしたい。気軽に使ってもらえる場所を目指す」と話している。■31日と11月1日、3Dプリンター体験会
施設利用はLINEから
ふくしまみんなのラボは31日と11月1日の2日間、3Dプリンターの体験会を催す。クリスマス飾りのデザインと制作ができる。参加費は中学生以上500円、小学生以下無料。初日は午後5時30分~午後8時、最終日は午後1時30分~午後4時。施設の通常利用は水曜から土曜までの午後2時~午後8時。利用料は個人会員が月額3千円、法人会員が同1万円、非会員は1日1500円。機材使用料が別途必要。機材の使い方や簡単な3D図面の書き方などは、無料で山口さんが指導する。体験会や施設利用は公式LINE(ライン)から予約する。問い合わせはLINEから受け付けている。

