【いわき信組不正融資 暴かれた闇】(中) 責任追及に〝壁〟 30年以上前の事案も

  • [エリア]

福島のニュース


「民事、刑事両面での経営責任の追及を早急に進めていく」。10月31日に記者会見したいわき信用組合の金成茂理事長は、旧経営陣に対する断固とした姿勢を強調した。
昨年11月に公表された迂回[うかい]融資に始まり、次々と明るみに出た無断借名融資などの数々の不正は、ついに反社会的勢力への資金提供にまで及んだ。元会長の江尻次郎氏らをはじめとした旧経営陣の責任追及は、再生に向け成し遂げなければならない命題となる。
信組は、旧経営陣に損害賠償などを求める民事訴訟を年内にも起こす方針を固めており、捜査機関と協議しながら刑事告訴も行う方針だ。しかし、責任追及と真の全容解明に向けてはさまざまな困難が立ちはだかる。
いわき信組が行った全ての無断借名融資の名義人、金額、返済期日などのデータを管理していたノートパソコン。決定的な証拠となる物品だ。しかし、「2024年ごろに処分した」とする元役員の証言が特別調査委員会の報告書で示され、実際に発見に至っていない。立証に必要な十分な物証を集められるのかが課題となりそうだ。
不祥事は1990年代など30年以上前の事案もある。関わった人数も多数に上り、旧経営陣が真相を打ち明けるか見通せていない。それぞれの関与の度合いや責任の有無を見極める裏付けを確保できるのか不安が残る。さらに資金の流れの再検証作業は膨大だ。
福島大行政政策学類の高橋有紀准教授(刑事法)は関わった人物の特定、反社などに流出した資金の流れを解明する必要を指摘している。「第三者委、特別調査委の調査内容などを手掛かりに、証拠が不十分な部分を家宅捜索するような流れになるのではないか」と分析。数十年前にさかのぼる事案などについては「時効について、告訴する側も念頭に入れざるを得ないだろう」と述べた。