やっと自由に戻れる 帰還まで「一日千秋の思い」 福島県双葉町の下長塚行政区長・福田猛雄さん

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やっと自由に戻れる 帰還まで「一日千秋の思い」 福島県双葉町の下長塚行政区長・福田猛雄さん

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「やっと自由に家まで戻れる」。福島県双葉町の特定帰還居住区域の一部で立ち入り規制が緩和された4日、下長塚行政区長の福田猛雄さん(72)は解体が進む自宅敷地で喜びをかみしめた。「住みたい町になるよう環境を整える」。木や花を植えて古里を明るくするつもりだ。一度は諦めた古里への帰還が、早ければ2026(令和8)年度にも実現する。「一日千秋の思い」で待っている。
バリケードから約300メートル先に自宅が見えるのに自由に立ち寄れない―。もどかしさを押し殺しながら毎月1度、通行証を申請。週2回ほど、ゲート前に立ち、古里を見守ってきた。
妻、母と自宅で被災し、東京電力福島第1原発事故を受け、生まれ育った双葉を追われた。南相馬市に身を寄せたが避難生活は長期化。古里は野生動物に荒らされ、変わり果てた。「もう帰還できない」。2017(平成29)年に相馬市に新居を構えた。諦めの一方、望郷の念は募った。
2023年に政府が特定帰還居住区域を新設し、かすかな望みが湧いた。意向調査で帰還の意思を示した。自宅が特定帰還居住区域内に認定されたのを受け、帰還を決断。避難指示解除を見据え、わが家を建て直そうと今夏に解体を始めた。
福田さんによると、下長塚行政区には原発事故発生前、約10世帯が暮らしていた。現時点で帰還意向を示しているのは3世帯ほどという。「自分が帰れば他の人も戻ってくれるはず。避難指示解除まで一日千秋の思いだ」
近所に住んでいた姉の志賀徳子さん(78)=浪江町=は下長塚の自宅を除染し帰還しようと考えているが、13年ぶりに見たわが家は草木に覆われていた。「これじゃ、まだまだ入れない。除染して元に戻して」と落胆した様子だった。