熊急増で収穫緊迫 最盛期の福島県内果樹農家 作業時間を短縮、降霜に焦り

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熊急増で収穫緊迫 最盛期の福島県内果樹農家 作業時間を短縮、降霜に焦り

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福島県内で熊の目撃や人身被害が収まる気配を見せず、影響は農業や観光にも及んでいる。収穫が最盛期を迎えた会津身不知[みしらず]柿の生産農家は、作業時間を日中の明るい時間帯に絞り、音や花火を鳴らして熊を寄せ付けない対応に注力する。霜の降りる時期が迫り、「作業を遅らせるわけにはいかない」と焦りをにじませる。紅葉の名所では注意喚起の張り紙を掲げたり、熊鈴を貸し出したりしているが、来訪希望者からの問い合わせが相次ぎ、関係者の悩みは尽きない。
広さ約2・7ヘクタールで会津身不知柿を育てる会津若松市の会津遠藤農園に朝と夕の各1回、爆竹の音が鳴り響く。収穫は午前9時から午後4時30分ごろまでの日が差す時間帯に限る。複数人で作業し、互いの声かけを徹底している。
市内では熊による農作物被害が確認されている。会津身不知柿の生産者らでつくる北御山生柿生産出荷組合と市は数日前、被害箇所周辺にわなを設置した。会津遠藤農園会長の遠藤憲二さん(70)と社長の遠藤晃英さん(37)は「熊に自分の生息地と人の畑の境目を分かってもらうのが重要」と口をそろえ、畑の草刈りなどにも余念がない。
「常に熊被害を心配しながら収穫している」。会津美里町の会津美里農研の佐藤智子さん(57)は緊張した表情で語る。
畑では10月下旬、実が食べられた跡や熊のふんが見つかった。熊よけの花火に加え、収穫作業は必ず複数人で行う。熊鈴も身に着けている。夕方は薄暗くなる前に撤収している。ただ、収穫が遅れ、朝方に霜が降りれば品質に悪影響を及ぼすため作業は時間との闘いだ。佐藤さんは「予定している今月中旬までに収穫を何とか終えたい」と話した。
福島市飯坂町でリンゴなどを栽培する農家菊田透さんはラジオを流して農作業を進めており、周辺での熊の出没が増えれば、箱わなを設置する方針という。■観光地に注意促す掲示板
観光地では、イベント中止や熊への注意を促す掲示板設置などの対策に追われている。
昭和村は喰丸小に立つ大イチョウのライトアップを10月下旬で中止した。村観光協会は8日に博士峠で予定した散策ツアーを取りやめた。
福島市の四季の里は開園時間を午後9時から同5時に短縮。例年はイベント開催時などに限っていた園内での爆竹や花火を毎日計5カ所で3~4回鳴らしており、来場者には熊鈴を貸し出している。
奥岳登山口から山頂駅までを結ぶ「あだたら山ロープウェイ」を運行する二本松市のあだたら高原リゾートはチケット売り場で熊の目撃情報を張り紙で周知している。例年は月に数件だった問い合わせが、1日数件単位に増えた。運行制限などの予定はないが、利用客の安全を最優先に対応する方針。■対策グッズ品薄
県内量販店
県内の量販店では、熊撃退用スプレーなど対策グッズが品薄となっている。福島市のスーパースポーツゼビオ福島南バイパス店では、10月上旬から撃退用スプレーの仕入れ数を例年の約2倍に増やした。メーカー側の在庫不足で一時出荷停止となり、購入希望者からの問い合わせが相次いだ。4日に約2週間ぶりに商品を確保できたが、再び在庫不足になりかねない状況という。