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福島県奥会津に制作拠点を構え、8月に80歳で急逝した版画家長谷川雄一さん=会津若松市出身=の作品展は7日、同市の杏屋で始まった。今秋に発表予定だった最後の新作と旧作を展示し、半世紀にわたる長谷川さんの創作の軌跡を紹介している。16日まで。
長谷川さんは1枚の木版を彫り進めながら色を重ねる「多色刷り」という技法を確立し、海外でも高い評価を得てきた。作品は米国ボストン美術館などに収蔵されている。毎年秋になると、杏屋で新作を発表してきた。今年も精力的に制作していたが、8月2日、帰らぬ人となった。
「家の仕事部屋はまだそのまま。夫は、私の中ではまだ生きている」。妻の千代子さん(77)は、雄一さんがいるはずだった展示会場に並ぶ作品を静かに眺める。雄一さんは生前、多くの人に慕われ、友人も多かった。「今年も個展を開くことができて、感謝の気持ちでいっぱい」と言葉を紡ぐ。長女の真帆さん(54)は「父は本当に版画が好きだった。ぜひ多くの人に見てもらいたい」と話す。
会場には遺作となった10点が並ぶ。奥会津の自然などをモチーフにした心象風景で、豊かな色彩と繊細さ、神秘さが見る人を引きつける。1980年代から近年までの旧作20点も展示している。会場には初日から知人や美術ファンが足を運び、版画に生涯をかけた作家をしのんでいた。
入場無料。時間は午前11時から午後6時まで。問い合わせは杏屋へ。

