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福島県内で飲酒運転による交通事故や摘発が相次ぐ中、県警は飲酒が引き起こした事故の悲惨さを伝える漫画を初めて制作した。今年10月末時点、県内では飲酒運転により6人(昨年ゼロ)が命を落とした。無謀運転の根絶に向け、多くの人の目に触れやすく直感的に訴えかける漫画を活用する。絵を描くのが得意な若手女性警察官が県内で実際に起きた事故を参考に漫画化した。13日から県警ホームページ(HP)で公開し、幅広い世代への効果的な広報啓発に役立てる。
漫画は「家族への罵声」(9ページ)、「人生が終わる瞬間」(6ページ)と題した2作品。いずれも飲酒運転により死亡事故を起こした運転手が登場する。事故後、自らも実刑判決を受け、その家族も賠償責任を負うなどして家庭崩壊に向かう様子を描いている。取り返しのつかない結果につながると、警鐘を鳴らす作品となっている。
作画担当に抜てきされたのは、県警察学校を卒業したばかりの若手女性警察官2人。県警本部交通企画課は危機的な県内の飲酒運転の状況を改善させる一手にと漫画を生かす企画を練り、適任者を探した。学校から2人の特技が「漫画描き」と紹介を受けて白羽の矢を立てた。登場人物の表情の変化や感情の揺れを繊細な筆致で描き、人の命を奪った揚げ句、自身や家族の人生を台無しにした悲劇を、ありありと伝えている。
県警によると、県内で飲酒運転の摘発件数は今年10月末に245件に上り、前年同期比17件増と厳しい状況が続く。郡山市のJR郡山駅西口駅前で1月、酒気帯び状態の男が運転する車に、大阪府から大学受験に訪れていた予備校生の10代女性がはねられ、死亡する事故が起きた。
県警はこれまで、ポスター掲示や交通安全教室、大規模検問などで飲酒運転の未然防止に注力してきた。一方、悪質で危険な飲酒運転が後を絶たないのが実情だ。こうした状況を踏まえ、文章や写真だけでは伝わりにくい空気感、臨場感を漫画で訴えようと作成を決めた。幅広い年代へ呼びかける一手段として活用する他、将来的に飲酒をする可能性のある若年層に対する抑止効果を期待している。
今後、新たに2作品を準備しており完成次第、ホームページに掲載する。県警本部交通企画課の安部明調査官は「飲酒運転の危険性や悪質性を訴え、一件でも多く悲惨な事故を減らしたい」と言葉に力を込めた。

