福島市長選 現地ルポ 駅前再開発 論戦に熱 造反警戒、集票手探り

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【立候補者】(届け出順、敬称略)馬場雄基 [ばばゆうき]
33
無新木幡浩[こはたひろし]
65
無現②高橋翔[たかはししょう]
37
無新
任期満了に伴う福島市長選は12日で折り返しとなる。まちづくりの刷新を掲げる元衆院議員の新人馬場雄基(33)、3期目を集大成と位置付けて市政継続を訴える現職木幡浩(65)の序盤情勢は「拮抗[きっこう]」と伝えられ、目と鼻の先の近さにある双方の陣営事務所はにわかに騒がしくなってきた。論戦の軸はJR福島駅東口の再開発だ。福島民報社などの世論調査でも、福島市の最優先課題に挙がった。互いの支持層は複雑に絡み合い、身内の造反を警戒しながら手探りで支持固めを急いでいる。激戦の現場をルポする。(文中敬称略)
「東口再開発は4年先。みんな早く使いたいはずだ。優先工区を設定し早期に完成させる」。11日午後、市内渡利で街頭に立った馬場は、現市政に不満を抱く支持者らをあおった。
馬場は告示日9日の第一声で「福島市は自分で頑張り過ぎ」「東口再開発やメガソーラーも自分だけで考えて進んできた」と木幡の政治手腕をけん制。批判票の受け皿としての旗印を鮮明にした。かねて「現市政に対極で挑む構図ではない」と強調してきたが、日に日に現職との対決姿勢が強まっている。
衆院議員時代に所属した立憲民主党を離党し、無所属を前面に打ち出す。選挙事務所に張り出された「ため書き」は幅広い政党の同志から届いたものだ。立民県連は「現職(木幡)を推薦する連合福島との協力関係に影響しかねない」として、党本部に「慎重な対応」を求めたが立民の国会議員から激励が相次ぐ。一部の立民県議も陰日なたとなり陣営を支えている。
選対本部の顧問を引き受けた自民県議の西山尚利は、告示前に木幡の対抗馬として擁立が模索されたが馬場の支援に回り、自らの地盤を連れ歩いてきた。馬場が「友人」という自民の農相鈴木憲和も応援に駆け付けた。馬場陣営の幹部は「簡単に言うと、与野党を問わない『反木幡』の集まり」と明かす。
懸念材料は県都での知名度不足。幼稚園から高校までを過ごした「地元」とはいえ、国政での主戦場は郡山市だった。陣営は33歳という若さが若年層を引き付けるとみる一方で、経験不足と映らないか気をもむ。選対本部長の吾妻雄二は「若さは一長一短あるが、市民に選んでもらえるよう訴え続ける」と意気込む。交流サイト(SNS)での小まめな投稿、質問に馬場が答える動画の配信などで浮動票を取り込む。








木幡は11日午後、大学生ら若年層が多い市内松川町で街頭に立ち、「東口再開発は見通しが立ってきた。完成を楽しみにしてほしい。若い人の感性を取り入れていく」と約束した。
木幡は基本設計に道筋を付けたJR福島駅東口再開発事業が定住の核になると訴えている。9日の第一声で「西口を含め今の街中は夜明け前の状態。これから希望の持てる姿が出てくる」と強調。「何より重要なのは、こうした政策を実行できるかだ」。2期8年の実績と経験は他候補にはないとアピールした。
4年前の前回市長選に続き自民、立憲民主、国民民主、公明、社民の各政党をはじめ、連合福島や市職労から推薦を取り付けた。地元の企業や各種団体からの推薦状は250枚を超え、前回を上回った。この8年間で市内全域に張り巡らせた32の地区後援会が組織戦の屋台骨だ。市議34人のうち、超党派の31人で構成する「市議の会」が脇を固めている。
木幡と距離を置いてきた市議の一人は「市政が刷新されれば、積み上げてきたまちづくりが遅れかねない」との理由で現職支持に回った。陣営関係者は告示後の変化をこう明かす。「これまで態度を明確にできなかった地元企業、団体からの訪問が日に日に増えている」。様子見だった援軍の加勢をにおわせた。
組織の足元が揺らぎ、選対内部には疑心暗鬼が生じている。木幡を推薦したはずの政党の一部県議らが表立って馬場を支援し、大型公共施設整備に不満を持つ経済人も追随しているためだ。選対本部長の小河日出男は「今の情勢を真摯[しんし]に受け止め、各持ち場で訴えを強める」と組織を引き締める。14日までの連日連夜、各地で個人演説会を開き、木幡が「結実」と位置付ける3期目の将来像を浸透させる。








会社経営の新人高橋翔(37)は自宅のある郡山市から連日、福島市に通い、自らポスター貼り、福島駅東口の周辺で街頭演説を重ねている。
若い世代の政治参加を呼びかけ、文化・芸術をなりわいにできる環境づくり、市立大学の創設、宇宙関連産業の誘致などを訴えている。