福島県公共工事に熊対策費 安全確保へ実費計上認める

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相次ぐ熊の出没や人身被害を受け、福島県は公共工事従事者の安全確保対策を支援する。県土木部と県農林水産部の発注工事や、測量などの委託業務の積算に熊被害防止対策費の計上を認めた。熊撃退スプレーや警報装置などの購入費などが対象。県が妥当性を確認し、受注者が実費を積算に盛り込む。公共工事現場で熊による人身被害が発生すれば工期の遅れにつながりかねず、早急な対応が必要と判断した。
対策費の対象は、撃退スプレーや警報装置をはじめ、爆竹やブザーなど熊の嫌がる音が出る資機材も含む。ただ、着工前に購入した物品は認めない。契約後は受注者からの申し出を受け付ける。県発注工事は共通仮設費、委託業務は「安全費等」に計上する。
今年度は県発注工事現場で熊による人身被害は発生していない。ただ、国土交通省の委託を受けて下郷町で猛禽[もうきん]類の生息調査をしていた男性2人が7月、熊に襲われけがをした。危機感を募らせた県が熊対策の在り方を協議してきた。
県は熊対策費の計上と安全対策の徹底を県の関係課や出先機関、建設関係団体に通知。県内59市町村にも参考事例として周知した。県は「復興や国土強靱[きょうじん]化事業の停滞につながらないよう、緊張感を持って対応していきたい」(技術管理課)としている。■猛暑の次は熊
現場、対策費膨らむ
公共工事の現場では夏の猛暑対策に続き熊対策に追われており、建設関係や測量関係の事業者の対策費用が膨らんでいる。
山中の工事を数多く手がけている巳ノ瀬建設工業(会津美里町)は、熊を追い払うために大きな音を鳴らすなどしてから作業に入っている。長谷川久人常務(63)は「購入費が実費計上になれば十分な対策を取れる。工期を守るためにも非常に役立つ」と喜ぶ。マルト建設(会津坂下町)も高価な撃退スプレーなどの購入に頭を悩ませてきた。道路改良工事の交通誘導員が現場で熊を目撃したといい、県の支援策を歓迎している。