福島のニュース
福島県は医師の不足や偏在が深刻な地域の課題解決に向け、承継・開業初期の診療所の経営を支援する新たな補助制度を設ける。医療機関が新設されても人口が少ない地域などでは経営が軌道に乗る前に十分に収入を確保できない事例もある。新たな財政支援で地域への医療人材の定着などを後押しする。12月定例県議会に必要経費を盛り込んだ補正予算案を提出する。13日の県議会各会派政調会で示した。
新制度では昨年末以降に承継・開業し、かつ経営が赤字となっている診療所を支援する。定着だけでなく新設も促すため、今年度中に開設する診療所も今後の経営状況に応じて助成の対象とする。
補助率は最大で今年度に生じた赤字額の3分の2とする予定。補助基準額620万円に加え、実際の診療日数に応じ、1日当たり7万1千円から8万7千円を支援する方針だ。県内の他の市町村と比べて医師数、診療所数が多い傾向にある福島市と郡山市の補助率は赤字額の最大3分の1と差をつけることで、医療機関の新設に偏りが出ないよう配慮する。
県内各保健所によると、支援対象となる昨年12月17日以降に新たに承継・開業した県内診療所は約40施設に上る。開業したばかりの診療所は収入が不安定な上、近年の物価やエネルギー価格の高騰で厳しい経営を余儀なくされているケースも見られる。地域医療を支える重要な診療所が維持できるよう、国の医師偏在対策支援の予算を活用する必要があると判断した。
厚生労働省の調査によると、2022(令和4)年末現在の県内の医師数は3914人で、人口10万人当たりの医師数は218・7人。全国平均の262・1人と比べ43・4人少なく、47都道府県中42位と依然として充足していない。県内2次医療圏別の医師数は県北が1374人、県中1042人、いわき596人、会津・南会津510人、県南が225人、相双167人。厚労省の基準では、人口当たりの医師数などの指標を分析した場合、県北、県中を除く4医療圏が「医師少数区域」となっており、特に診療所の新規開設や維持が必要な状況となっている。
県医療人材対策室は「補助制度の導入により医師数の少ない、へき地などでの医療提供体制の強化につなげたい」としている。

