【ひと模様】やっぱり和菓子が好きだ 平田清喜さん(70) 福島県郡山市に16日新店 職人復帰、文化守る決意

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【ひと模様】やっぱり和菓子が好きだ 平田清喜さん(70) 福島県郡山市に16日新店 職人復帰、文化守る決意

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和菓子職人として一線から退いていた福島県郡山市の平田清喜[せいき]さん(70)は、地域の和菓子文化を守るため再び腕を振るう。16日、市内桑野に「和菓子処
四郎治[しろうじ]
徳庵[とくあん]」を開店する。全国菓子大博覧会で数々の受賞を重ねた腕前で、明治時代から続く菓子店「平田屋」の5代目だった。「俺やっぱり、和菓子が好きだ」。情熱が日増しに高まり、細る和菓子業界に危機感を抱いて決断した。子どもの職業体験を積極的に受け入れ、担い手の育成につなげる。
12日、のれんを入り口に掲げて晴れやかな表情を見せた。店内に真新しい神棚を据え、一心不乱にあんを団子に塗っていく。オープンに向けて、忙しい日々を送る。
郡山市産米「あさか舞」の米粉を使い、しっとりと蒸し上げた上用まんじゅうに加え、きんつばやくるみゆべしなど定番の味もそろえる。市内湖南町名産の布引大根の葉を混ぜ込み、小気味よい食感が楽しめるおはぎなど、地元食材を生かした商品を開発する考えだ。
「さまざまなチャレンジをしたい」。児童生徒の校外学習などを積極的に受け入れ、次世代の育成に注力するつもりだ。福島大食農学類と連携した6次化による商品開発に取り組み、担い手の裾野を広げていく。◇




平田屋は1899(明治32)年に創業した老舗。4代目徳之助さんの長男として、幼い頃から菓子作りを手伝ってきた。高度経済成長が始まった昭和30年代。市内には菓子店が林立し、結婚式でらくがんが大量注文されるなど、業界は活況を呈していた。
郡山商高を卒業後、大阪市で修業し、経営の視点を得るため大阪経済大の夜間学部で学んだ。欧州に渡り、菓子作りの見聞を広め、1982(昭和57)年、27歳で5代目を継いだ。市内では最も若く、妻清子さん(69)の「おいしいね」の言葉を励みに誠実に和菓子に向き合った。
「安積開拓おこわ」や「麩[ふ]まんじゅう」などの看板商品を生み出した。その技量は全国菓子大博覧会でも認められ、腕利きの職人として名をはせた。長女智子さん(42)と征行さん(46)夫妻が職人として育ったのを認め、2023(令和5)年に平田屋ののれんを譲った。
趣味の詩吟を楽しむ日常で、ふと新たな菓子のアイデアが浮かんだ。半世紀にわたり、季節の温度や湿度を肌で感じあんをこね、米粉を蒸してきた職人としての自負を自覚した。現場に戻りたい思いが強まった。◇




さらに背中を押したのは和菓子店が次々に姿を消していく現状だった。
生活様式の変容や大型店の進出に伴い、市内の店舗は減少している。郡山菓子商工協同組合にはピーク時約40の組合員が加盟していたが、近年は減少に歯止めがかからず、5月に解散した。和菓子文化が失われかねない焦りを感じていた。
窮状を食い止めたい―。型にとらわれず、自由な発想を生かすため、新たな店の立ち上げに踏み切った。
店名は曽祖父や父親にちなんだ。「おやじたちの力を借りたい」とほほ笑む。子どもからお年寄りまで、気軽に立ち寄れるよう店内にはイートイン用のカウンター席4席を設けた。和菓子を通じ、地域に交流の輪の広がりを願っている。■14、15の両日プレオープン
「和菓子処
四郎治
徳庵」は郡山市桑野3丁目18の11。14、15の両日にプレオープンする。営業時間は午前9時~午後5時。不定休。問い合わせは同店へ。