福島のニュース
16日に投開票された福島市長選で、人口約27万人の県都のかじ取りを託された元衆院議員の馬場雄基氏(33)は、2期の実績を打ち出す現職に競り勝った。現職は主要な政党、団体からの推薦に加え、大半の市議の支援を受けていた。勢力を二分したわだかまりを解く調整力が問われる中、JR福島駅東口の再開発事業の遅れ、厳しい見通しの行財政運営などの難題が目の前に横たわる。都道府県庁所在地で最年少首長の若きリーダーが唱え続けた「まなざしの中にある光」をどうともしていくか。馬場市政の針路を探る。
初当選から一夜明けた17日朝、馬場氏は福島駅東口近くの街頭に立ち、道行く市民の声に耳を傾けた。すぐそばには、更地となった再開発事業の建設予定地が広がる。「駅周辺の再開発に関わる方々との関係構築を早急に進めたい」。優先事項に掲げた早期完成の実現に意欲を示した。
再開発事業は計画の見直しや遅れが相次ぎ、開業は最短でも2029(令和11)年度の見通しだ。市と、地権者らでつくる再開発組合が今年7月に公表した基本設計によると、地上10階建ての複合棟を建設する。市が取得予定の公共エリアに最大1500人収容のコンベンションホールを置くほか、民間エリアにはカフェやシェアラウンジ、物産館、オフィスなどが入居する。民間の駐車場棟と住宅棟が隣接する。
馬場氏は選挙戦で、早期完成に向けた打開策として、優先工区を設定した段階的な活用開始の必要性を訴えた。歳出を抑えるため、市内に点在する県施設との役割分担も念頭に置く。しかし、現職の木幡浩氏(65)はその視点に懐疑的だ。16日夜、敗戦を受けた取材に対し「(優先工区は)既に検討済み。工期を分けてやるのは難しい」と内情を明かした。再開発事業はエリア一帯の整備を前提に、国土交通省の「社会資本整備総合交付金」が投じられている。県、市の助成を含めると、2018(平成30)年度から今年度までに合わせて95億円が解体や設計などに充てられてきた。
市議会は木幡氏と議論を重ね、各年度の予算審議に向き合ってきた。議長の白川敏明氏(70)は「馬場氏の当選を民意として受け止めたいが、これまで目指してきたまちづくりがある」と出方を注視する。再開発組合は早期完成の方向性自体は一致しているとして「馬場氏と経緯を共有しながら、駅前の将来像をともに形にしていく」とコメントした。
再開発事業をはじめとする市街地活性化の行方は論戦の的になった。駅前通り沿いにある福島医大保健科学部に通っている3年の高嶋紗彩さん(20)は「学生も通いやすい店舗を充実させてほしい」と願う。空洞化したまちに、にぎわいをいち早く呼び込めるか。市民の期待に応える実行力が求められている。

