二の舞にならないで 柏崎刈羽再稼働へ 福島の経験風化懸念 県民、安全性に厳しい目

  • [エリア] 郡山市 須賀川市 会津若松市 相馬市 南相馬市 富岡町 大熊町
二の舞にならないで 柏崎刈羽再稼働へ 福島の経験風化懸念 県民、安全性に厳しい目

福島のニュース


新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原発の再稼働容認を表明した21日、原発事故に見舞われた福島県民は複雑な心境で見守った。14年半が経過した今もなお、古里を追われ、事故自体の収束に明確な道筋はついていない。「原発事故はまだ何も解決していない」「福島の経験を風化させないで」。長らく避難生活を送る県民は国や東電の安全順守に向けた姿勢に厳しい目を向けた。
「福島を教訓とした新たな規制基準、知見が反映され、幾重にも安全対策が講じられている」。同日夕、記者会見した花角知事は国の対応を前提に、容認に至った理由を明らかにした。
大熊町から会津若松市に避難した主婦泉順子さん(72)はスマートフォンで福島民報の号外を確認すると「福島の二の舞になってほしくない」とこぼし、再稼働に不安を募らせた。
勤務先の小学校が会津若松市内に避難した関係で自身も拠点を移した。連れ添った両親は、避難先で他界。帰郷の願いはかなわなかった。原発災害の悲惨さと、やり切れなさが今も胸を締め付ける。「『安全』という言葉は口では簡単に言える。再稼働をするのなら、有事を想定した万全な準備を尽くし、緊張感を持った作業を求めたい」と訴えた。
柏崎刈羽原発では、テロ対策に関する秘密文書の不適切な持ち出しが明らかになったばかり。南相馬市小高区出身で、地元で飲食店を営む加藤知樹さん(31)は「怠慢、怠惰で安全が崩れることのないよう徹底してチェックすべきだ」と注文をつけた。
原発は地方の経済に潤いを与える代わりに、立地自治体がリスクを背負い、電力を首都圏に供給する構図は福島県と重なる。大熊町から須賀川市に避難する鎌田清衛さん(83)は「リスクを負う新潟県民の不安を置き去りにしてはいけない」と警鐘を鳴らした。
今回の再稼働は、東電の経営改善策の一つとされ、福島第1原発の廃炉や福島県復興とも関わり深い。富岡町の会社社長、中山駿さん(34)は同町出身で、原発立地が地域振興に与える影響を感じてきた。新潟県柏崎市に避難した経験もあり、人ごとには思えない。「廃炉に向けた長い計画の中で、経営改善と資金は必要だ。再稼働、廃炉作業ともに住民が安心できるよう徹底した努力を続けてほしい」■地元の同意不十分
新潟への避難住民
再稼働に対する新潟県民の意識調査では賛否が拮抗[きっこう]している。福島第1原発事故で郡山市から新潟市に家族4人で自主避難した会社員、菅野正志さん(51)は再稼働に地元の同意が得られたとは思っていない。新潟県などに避難した住民による訴訟の原告の一人として被害の実情や東電の責任を訴えている。「平野地の新潟で事故が起きれば、人や農作物などの被害は福島の何倍にもなりかねない」と不安を口にした。