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福島県浪江町の新町通りへと15年ぶりに会場を移し22、23の両日開かれる伝統の大露店市「十日市祭」の準備が整った。通り沿いで自転車・玩具店「乗り物センター三原」を営んでいた三原優蔵さん(71)・裕子さん(69)夫妻が露店を出し、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後初めて店頭に立つ。当時の利用客から後押しを受け、節目に合わせて出店を決めた。「原点に戻る町の風物詩を盛り上げたい」と決意を抱く。
三原さん夫妻は21日、避難先の千葉県柏市から露店を出店する店の跡地に足を運び、商品整理などの準備を進めた。優蔵さんは「思い出がよみがえる。ワクワクする」と心待ちにする。
店は裕子さんの祖父母の代から続く老舗だった。「町のおもちゃ屋」として人気を集めたが、原発事故による避難生活が続き、2020(令和2)年に解体した。ただ、「浪江で過ごしてきた歴史は簡単に消せない」と売り場だけは壊さずに残し、倉庫としておもちゃを保管してきた。
十日市祭は明治時代から親しまれ、震災発生前は歩行者天国の新町通りに300以上の露店が軒を連ねた。来場者は3日間で約10万人を数えた。三原さん夫妻の店にも小遣いを握りしめた子どもたちであふれた。2人は「店の棚が空っぽになった」と当時を懐かしむ。
原発事故発生後は町民の避難先となった二本松市で継続。2017(平成29)年から町内に戻り、町地域スポーツセンターで実施してきたが、5月に実行委員会が新町通りでの開催を決断した。幼少期に三原さん夫妻の店を訪れていた実行委メンバーから依頼を受け、「町のにぎわいに貢献したい」と出店を決めた。
当日は眠っていたプラモデルやカードゲームなどを販売し、子どもが楽しめる景品付きの輪投げコーナーも設ける。優蔵さんは「旧友や子どもたちとの交流が楽しみ」と胸を躍らせる。町の復興が進む中、40超の商店が軒を連ねた新町通りのにぎわい再興も願う。「今回の十日市を機に、町がさらに活性化すればうれしい。そのための力になっていきたい」と思い描く。
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十日市祭は地元の特産品などの露店が約130店舗並ぶ他、歌やお笑いなど多彩なステージを繰り広げる。時間は午前9時30分から午後4時(最終日は午後3時)まで。22日は正午から、食べ物や家電などが安く買える「せり市」を初開催する。駐車場は町役場、中央公園などを開放する。イベントのホームページ(https://namie-tokaichi.jp/)で詳細を確認できる。

