車と熊衝突 保険の扱い どうなるの 福島県内事故昨年の倍 内容次第で補償対象外 遭遇時急ハンドル避けて

  • [エリア] 福島市 南会津町
車と熊衝突 保険の扱い どうなるの 福島県内事故昨年の倍 内容次第で補償対象外 遭遇時急ハンドル避けて

福島のニュース


福島県内で車と熊の衝突が急増する中、損害の扱いに関心が集まっている。日本損害保険協会(損保協)によると、熊など野生動物との衝突は一般的に「物損事故」として扱われる。運転者が加入する自動車保険の内容次第では補償対象外となる場合も。熊の頻出地域では契約内容の確認も自衛策の一つとなりそうだ。日本自動車連盟(JAF)福島支部は熊との遭遇時の対処法として急ハンドルを切らず、減速するようアドバイスしている。
熊やイノシシといった野生動物との衝突はペットの犬猫などと違い、補償を求める相手方となる飼い主がいない。このため、衝突は単独物損事故と見なされる。車両の修理費は自身が任意加入している車両保険から賄うのが一般的だ。保険を使うのであれば、発生地域を管轄する警察に届け出て「事故証明書」を取る必要がある。
損保協によると、動物との衝突を認定する上ではドライブレコーダーの記録を頼る。「機器を搭載していない」「角度や明るさなどの問題で動物が写っていない」などの場合は①当事者の申告内容②体毛や血痕などの痕跡③目撃者の証言―などから総合的に判断する。保険が適用されれば追加の自己負担はなくなるが、等級が下がり、保険料が上がることになる。
保険の契約内容次第では補償対象外となる恐れもある。「エコノミー型」などと称する、補償範囲を「車両対車両」などに限定している契約では、動物との衝突には適用されない。修理費は自費で賄うため、思わぬ出費が家計にのしかかる。
「第三者を巻き添えにしない」意識も必要だ。熊を避けたいあまり急ハンドルを切った結果、対向車との衝突や歩行者をはねるなどの物損・人身事故を誘発しかねない。こうしたケースは双方の過失割合に応じて対人・対物の賠償保険でカバーすることになる。
損保協によると、北海道では昨年10~11月に車とエゾシカの衝突が多発。2カ月間で加盟各社が1229件を扱い、平均支払額は61万5千円に上った。熊との衝突の件数・支払額の集計はないものの、同じ大型動物に当たるため、修理費も同程度になるとみている。広報室の担当者は「野生動物が頻繁に出現する地域に住む方には、保険内容の確認をお勧めしたい。不意な出費に備えるためにも必要に応じて見直しを検討してほしい」と提案している。
JAF福島支部は野生動物の頻出地域では速度の抑制、ハイビームの活用、車間距離の確保に努めた上で、万一の際には人命最優先の行動を呼びかけている。事業課の担当者は「急ハンドルを避け、接触するまでにブレーキで可能な限り減速してほしい」と話している。■頭が真っ白に
搬送後に衝突
救急車の運転手
熊と衝突した衝撃はどの程度なのか。南会津町東の国道289号では9月9日午後8時35分ごろ、搬送を終えた南会津地方広域消防本部の救急車が体長約150センチの熊と衝突した。「一瞬の出来事だった」。運転していた只見出張所救急隊の馬場勝成さん(32)は事故を振り返る。
遭遇したのは田園地帯を走る山道だ。脇から黒い物が飛び出し、気付いた時には前方100メートルに迫っていた。ブレーキを踏んでも避けきれず、「ドン!」という鈍い音が響いた。すぐに外に出れば危険と思い、500メートルほど進んで停車。警察に通報後に見回ると、ドアやフェンダーにへこみや傷ができていた。
幸いにも患者は乗せておらず、隊員にけがはなかった。「通勤や搬送で通り慣れた道だが、突然だったので頭が真っ白になった」と緊迫ぶりを回顧した。■福島市が12件で最多
県自然保護課のまとめによると、県内では自動車やバイクと熊の衝突事故は6~10月に24件あり、昨年同期の12件から倍増した。福島市が12件と最も多く、県北14件、会津10件と2地方に集中している。全体の半数は熊の行動が活発な夜間から早朝に起きた。