選ばれる企業づくりを 地方の人材確保応援誓う 転職サイト大手「ビズリーチ」社長 酒井哲也さん(福島市出身)

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選ばれる企業づくりを 地方の人材確保応援誓う 転職サイト大手「ビズリーチ」社長 酒井哲也さん(福島市出身)

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人さし指をかざし、決めぜりふを口にするコマーシャルでおなじみの転職サイト大手「ビズリーチ」。急成長を続ける会社を率いるのは福島市出身の社長酒井哲也さん(45)だ。転職を経て入社してから、11月で10年となり、トップに就いて約3年4カ月が経過した。人材確保は地方の中小企業にとって喫緊の課題で、労働者から選ばれる企業づくりが大切と訴える。「どの会社にも働き手に選ばれる理由は必ずある。ぜひ経営者自らが熱意を持って動いてほしい」と自らも解決の後押しを誓う。
近年の新規高卒・大卒者就職内定率は90%を超え、学生優位の「売り手市場」が続く。一方、東京商工リサーチの今年2月の調査で「人手不足で負の影響がある」と答えた県内企業の割合は、全国平均を3・9ポイント上回る56・2%だった。既存社員の作業負担の増加などの課題を抱え、業種によっては受注を断らざるを得ないケースもある。
酒井さんは「各企業は社員を選ぶ側から、選ばれる側に転換した上での経営が欠かせない」と時代の変化を読み解く。経営者自身が自社の強みや魅力を自覚し、採用活動の早い段階から就職希望者に思いを伝えるなど積極的な姿勢が重要と呼びかける。ビズリーチを活用し、地方の経営者の熱意が首都圏の大企業勤務者の心を引きつけ、採用につながったケースが多数あるという。
一方、各企業を支えている従業員を生かす視点の重要性も指摘している。1月に始めたサービス「社内版ビズリーチbyHRMOS(バイ・ハーモス)」は社員のスキルや経歴と企業内の役割を最適につなぐ発想から生まれた。「働き手がいる時点で、その企業には『働く理由』が必ずある」と言い切る。■「若者よ、物事知り道切り開いて」
転職経てトップに
酒井さんは福島高、慶応大商学部を経てスポーツライセンス関連企業に入社したが、約1年で倒産。人材関連事業大手に移った約10年後、思いがけない形でビズリーチとの縁が生まれた。「そろそろ転職どうですか」。知人の結婚式に同席していた創業者の南壮一郎さん(49)=現ビジョナル社長=に開口一番、入社を勧められた。当時は転職サイトの開設から約5年のベンチャー企業。いったんは断ったが、思いを真っすぐ投げかけてくる南さんの熱烈な誘いに次第に心が動いていく。「新しい会社をつくる側になろう」。2015(平成27)年11月、職を移した。
ビズリーチ事業部長などを経て2020(令和2)年2月に副社長に就いた。2代目社長の多田洋祐さんを支えたが、2022年7月、多田さんが急性心不全で亡くなる。40歳だった。
予期せぬ出来事への柔軟な対応が結果的に自身のキャリアを築く―。酒井さんは米国の心理学者・クランボルツ氏が唱えた「計画的偶発性理論」に影響を受けてきた。「緊急事態に登板しない副社長は無意味だ」と社長を引き継いだ。当初は社員との関係に悩んだが、トップ自らが好奇心を持ち、素直な思いを伝えるのが大切との考えに行き着いた。
県内の若者に向けては「多くの物事を知り、進む方向を自分で決め、道を切り開いて」とエールを送る。※ビズリーチ
2009(平成21)年4月、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を開設した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後の2016年から5年間、経済産業省の委託を受け、県内被災12市町村の事業者の人材確保事業に携わった。2020(令和2)年2月に設立された持ち株会社のビジョナル(東京都)のグループ経営体制に移行し、同社の完全子会社となった。資本金1億3千万円。従業員数は7月末時点で1743人。2025年7月期の売上高はグループ全体で801億6千万円。