パーキンソン病根本治療 新薬を開発 来年度に治験開始 福島市・福医大 川畑特任准教授の研究チーム

  • [エリア]
パーキンソン病根本治療 新薬を開発 来年度に治験開始 福島市・福医大 川畑特任准教授の研究チーム

福島のニュース


福島医大医学部付属生体情報伝達研究所の川畑伊知郎特任准教授(44)の研究チームはパーキンソン病の根本治療につながる新薬を開発した。従来の薬は症状を抑制し、和らげる効果に限られていたが、新薬は発症初期から中期なら症状を改善する可能性が高いという。既に、マウスなどを使った実験で効果を確認しており、2026(令和8)年度から3年間、人体への治験を行い、2029年度以降の薬事承認を目指す。
パーキンソン病は体の動きが不自由になる進行性の神経疾患。厚生労働省の統計では国内の患者数は約25万人(2022年現在)。難病情報センターの衛生行政報告によると、パーキンソン病関連疾患で医療受給者証を受けている人は福島県内で1903人に上る。
川畑特任准教授らのチームが開発している新薬の効果のイメージは【図】の通り。パーキンソン病は神経細胞から分泌されるドーパミンの量の減少によって発症するとされている。原因はタンパク質「αシヌクレイン」の脳内への異常蓄積によって神経細胞が死に至る点まで確認されていた。ただ、蓄積される要因は長年不明だったという。川畑特任准教授らは何らかのタンパク質が関わっているとみて研究を進めた。長年の実験などの結果、同じく脳内にある脂肪酸の輸送に関わるタンパク質「FABP3」との付着による可能性が高いことを新たに突き止めた。同時に、FABP3との付着を解消する効果のある薬の開発にも成功した。
パーキンソン病を発症させたマウスに新薬を投与したところFABP3とαシヌクレインが付く動きが弱まる効果を確認。αシヌクレインが神経細胞内へ取り込まれる現象が改善された。脳内蓄積が解消された結果、運動障害が出ていたマウスが健常レベルまで回復したという。
現在、パーキンソン病の治療は症状を抑えたり緩和する対症療法のみで、疾患の原因から治療する薬剤の開発が望まれていた。新薬の実用化に向けた研究は今秋、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の国際展開プログラムに採択され、上限5億円の支援が決まった。JSTは「社会・経済に大きなインパクトを生み、国際展開を含め大きく事業成長する可能性のある革新的な治療薬」と評価した。
2015(平成27)年から新薬開発に取り組んでいる川畑特任准教授は「新薬はパーキンソン病以外の複数の神経疾患への適応拡大も期待できる。早期の実用化に向け、治験に取り組む」と述べた。