福島のニュース
人生を共にするペットは家族同然。福島県郡山市にある1967(昭和42)年創業の仕出し・弁当製造「清水屋」は、弁当に使う食材で愛犬向けの無添加ペットフードを開発した。12月15日、取扱店「TSUMUGU(つむぐ)」を市内久留米に開く。半世紀以上にわたり地域住民の胃袋をつかんできた老舗だ。素材のうまみを引き出す技を生かし、獣医師が監修した低カロリーで栄養バランスの良い健康食に仕上げた。店舗責任者の国分まいさん(40)は「弁当屋だから作れる安全安心なペットフードを提供していく」と意気込む。
国分さんは動物用医薬品製造・販売の日本全薬工業(郡山市)に18年間勤め、広報などを担った。2022(令和4)年10月、母の春美さん(63)が経営する清水屋に入社。前職の経験を生かし、ペットの写真撮影やグッズ製作といった事業を展開してきた。
5年ほど前、年老いた愛犬が食欲不振になったのがきっかけで、食事を手作りするようになった。具材を小さく刻む煩雑さなどを感じ、同じ悩みを持つ愛犬家のためにペットフードを新たに開発できないかと試行錯誤を重ねた。
試作品を従業員の愛犬にも与えてみたが、食い付きがいまひとつ。人間の100万倍以上と言われる犬の嗅覚。食欲を刺激しようと、香り高いマイタケやゴボウを加えてみると、好んで食べてくれるようになった。食べやすさだけでなく、食べ応えにもこだわった。
常時販売するのは冷凍の4種類。会津産馬肉とサツマイモを主な材料とする「うまうまごはん」、県産エゴマ豚とシイタケなどの「ぶーぶーごはん」、伊達鶏とカボチャ、ゴボウ入りの「とっとのごはん」は10個入りで税込み千円程度、野菜が豊富な「福島牛やわらかスープ」は1500円程度にする予定。賞味期限は製造日から約半年と日持ちが良く、電子レンジで温めるか自然解凍する。イベントや季節に合わせてミニ弁当やスイートポテトなどのスイーツも店頭に並べる。
同社によると、弁当店がペットフード事業を展開するのは県内初。創業当時から徹底する品質管理が強みだ。さらに、市内の「きくざきペットクリニック」の監修を受け、アレルギーを起こしにくい食材を主に採用した。タンパク質や食物繊維など栄養バランスに気を配った。味付けはせず、調理法で素材のうまみを引き出した。健康志向の高まりを意識し、ペットフード公正取引協議会の規約で任意となっている商品のエネルギー(カロリー)をあえて記載した。
常温スープの試作を進めており、新店で飼い主用の弁当を販売する構想も温めている。「一緒に食事を楽しみながら大切な時間を過ごして」■試食や撮影も
「TSUMUGU」は清水屋の隣に開く。エゴマ餃子専門店「清水屋みさと」を併設する。会津産馬肉、県産エゴマ豚、伊達鶏を使った「ごはん」3種類は試食可能。ペットの写真撮影事業のスタジオを新設し、落ち着いた空間で撮影できる。営業時間は午前10時から午後5時。問い合わせはTSUMUGUへ。■進むペットの家族化
支出額
月1万6千円超え
ペットの健康を気遣う取り組みは食事以外でも広がっている。国内でペットフードを製造・販売する企業98社で構成する一般社団法人ペットフード協会によると、2024(令和6)年の1カ月平均の飼い犬関連支出額は1万6198円。2019年の1万2594円と比べ、5年間で約1.3倍に増えた。協会は物価や医療費の上昇に加え、ペットの「家族化」と健康志向の高まりが影響していると指摘。ペット関連のビジネスが増えているという。
10月にオープンした福島市の「ペットケアサービス
みんとの杜[もり]」はシニア犬の介護ケアやペットホテル、ドッグカフェなどのサービスを提供している。代表の舩山亜紀子さん(46)は「ペットの家族化が進んでいると感じる。もう一つのおうちとして気軽に利用してほしい」としている。

