有機農業再興へ連携 福島県が連絡会議新設 全県拡大目指す

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有機農業再興へ連携 福島県が連絡会議新設 全県拡大目指す

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福島県は県産農産物の魅力向上へ、有機農業を推進する市町村と「連絡会議」を新設する。生産から消費まで地域ぐるみで有機農業を利活用する「オーガニックビレッジ」を宣言した地域のノウハウを共有し、全県への拡大を目指す。福島県は東日本大震災発生前まで有機農業の「先進県」だったが、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示や風評の影響で後退した。被災から15年の節目に向け、付加価値と一定の需要を見込める有機農産物の再興への機運を高める。
オーガニックビレッジはほ場の団地化や栽培技術の確立による生産者の育成、学校給食への活用、流通・小売現場での販売促進などを進める。農林水産省が参画する市町村を支援している。県内では3市村(二本松、喜多方、鮫川)が宣言をしており、来年度には会津若松市が続く見通しだ。
県はこの4市村と連絡会議を始動させ、宣言市町村間の情報共有やネットワーク形成を促す。宣言を検討する市町村向けの研修会やセミナー、市町村単位で催す販売イベントへの相互出展、ホームページや交流サイト(SNS)での情報発信などを想定している。全市町村に声をかけ、段階的に関心の輪を広げる方針。県単位の推進・連携組織は東北6県で初となる。
県内で有機JASの認証を受けた栽培面積の推移は【グラフ】の通り。震災と原発事故前年の2010(平成22)年は280ヘクタールで全国10位、有機JAS規格に沿って有機農産物を生産する生産工程管理者は102件で同5位だったが、震災と原発事故を境にいずれも大幅に減った。2021(令和3)年時点の面積は182ヘクタールで全国18位、生産工程管理者は65件で全国13位にとどまる。中通りの倍近くの面積があった浜通りが被災により、大幅に縮小した。現在は会津地方が全体の5割以上を占める。
県によると、県内の複数のスーパーに専用コーナーが常設されるなど、自然志向や健康意識の高まりを背景に有機農産物の需要は拡大傾向にある。県も今年度はマルシェを4回開いた。連絡会議の発足を機に来年度からの第3期復興・創生期間での普及拡大の足掛かりとする。環境保全農業課は「会議を持続可能な農業環境の構築、販路の拡大につなげたい」としている。
鮫川村は11月に県内の村では初めてオーガニックビレッジを宣言した。農林商工課農林畜産係の石井洋平係長(46)は連絡会議の設立を「技術や情報を共有できる」と歓迎する。村は学校給食に有機食材を今後、用いる。宣言後に近隣町の保護者から村の学校に子どもを通わせたいと相談があった。「有機農業には移住定住や関係人口拡大の呼び水としての力がある」と語る。村内で水稲や野菜を有機栽培する進士陽平さん(30)は「栽培技術の向上が早く進む。相談先が増える安心感は参入を後押しする」と期待した。







オーガニックビレッジ連絡会議の設立総会は5日、郡山市の県農業総合センターで開かれる。