おこめ券どうすっぺ 生産者「自分たちがもらっても…」 消費者「家計の助け」「焼け石に水」 福島県内

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おこめ券どうすっぺ 生産者「自分たちがもらっても…」 消費者「家計の助け」「焼け石に水」 福島県内

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政府は3日、物価高を受けて自治体に活用を推奨する「おこめ券」などの経済対策について、市町村への説明を始めた。米どころの福島県では、券配布による恩恵への評価は分かれる。生産者は「自分たちがもらっても…」と困惑。物入りの年末を控える消費者は電子クーポンや商品券など他の手段を含め、早期の支援を求める。財源となる重点支援地方交付金(特別枠)の使い道を任される市町村も多くは態度を決めかねている。
「おこめ券をもらってもなぁ」。会津若松市河東町の農業武田芳仁さん(71)一家の食卓に上がるのは自家で育てたコメだ。外で買う機会はない。仮に市から券が届いたとしても、その使い道は限られる。
おこめ券の流通に伴い気になるのは米価の動向だ。今秋の新米には集荷業者や個人から大口の注文が相次いだ。既に消費者の元に十分な量が出回ったと感じている。ただ、5キロ入りの店頭価格は以前より割高な4千円台を保っている。資材高騰などに伴い生産コストは膨らんでいる。「券を配ったとしても、値段に大きな影響はないだろう。高値が定着すれば、コメ離れにつながりかねない」と来春の作付けに思いをはせた。
福島県の2025(令和7)年産主食用米作付面積は6万7千ヘクタール。都道府県別で4番目に多く、前年からの増え幅はトップだった。弘前大農学生命科学部の石塚哉史教授(農業経済学)は県内のコメ流通の傾向を、生産者以外にも親族らを頼りコメを手に入れる「縁故米」の割合が高いと指摘。「都市部に比べ、おこめ券の効果や需要にばらつきが出るだろう」と分析する。
政府は早期に使ってもらうため、おこめ券に使用期限を設ける方針とされている。食べ盛りの中学生2人を育てる福島市の後藤彩さん(43)は「子どもはコメ好きで毎朝食べる。長期休みは減りが早いので、配布されれば家計は助かる」と早急な支援策の実現を期待した。
1人当たり3千円相当としている政府の支援額の規模に対し、物価高が続く中で「焼け石に水」との反応も少なくない。郡山市の日大工学部3年五十嵐舜太さん(21)は効果を一過性とみる。「授業料への補助や減税など、根本的な部分の支援がほしい」と望んだ。■県内「検討」「未定」が大半
4町村は見送り
交付金使い道模索
福島民報社が3日に59市町村に聞いたところ、只見、三島、金山、川内の4町村がおこめ券の活用を見送る方針と回答。代替の支援策を検討するとした。この他は予算配分や国の説明などを踏まえて「検討中」「未定」とした。各市町村は家計の負担緩和、地域経済の活性化の両面から交付金の使い道を見極めようとしている。
三島町は町内で広く使える商品券の配布などを検討している。コメを扱う店が限られているためだ。産業建設課の担当者は「町民の多くは町外でコメを買い求めており、おこめ券による地元経済への恩恵は少ない」とみる。金山町農林課の担当者も「1年分のコメをまとめて農家から購入する町民が多い。券を配っても喜ばれないだろう」と話す。
一方、磐梯町は先行して今秋、町独自におこめ券を導入し、65歳以上の高齢者のみの世帯に配布した。町議会での予算案議決から発送までは半月余り。397世帯565人に対し、1人当たり町内産米2キロ分として3枚を配った。高齢者の持ち運びを考慮し、1~3回に分けて引き換えられるようにした。
子育て世帯から支援を望む声があり、今後は国交付金を使い、18歳以下の子どもがいる世帯に配る方針だ。田中勝副町長は「家計の負担を少しでも減らせるように取り組む」としている。※おこめ券
全国農業協同組合連合会(JA全農)と全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)がそれぞれ発行する金券。図書カードやビール券と同様に、贈答用などとして流通している。米屋やスーパー、ドラッグストアなどで使え、店によってはコメ以外の品と引き換えられる。既存の券の販売価格は1枚当たり500円。印刷などの経費分を引いた440円分のコメを購入できる。現金と併用も可能。