阿武急(福島県伊達市)が「みなし上下分離方式」導入へ 維持管理費、沿線自治体が負担

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第3セクター鉄道・阿武隈急行線を運行する阿武隈急行(本社・福島県伊達市)と沿線自治体は、経営改善に向けて「みなし上下分離方式」を来年4月にも導入する。鉄道会社が施設・設備を保有し、沿線自治体が維持管理費を担う仕組みで、鉄道会社にとっては費用がかさむ維持管理費を自治体に負担してもらうことで財務基盤が安定する利点がある。国の補助を受けるために必要な鉄道事業再構築実施計画を年内をめどに国土交通省に申請する。
県庁で4日に開いた地域公共交通協議会で阿武隈急行と沿線自治体が示した。阿武隈急行線は福島市の福島駅と宮城県柴田町の槻木駅を結んでおり、福島、宮城両県と福島県側の福島、伊達両市、宮城県側の角田、柴田、丸森の3市町が沿線自治体。経営状況が厳しいことから、沿線自治体は2023(令和5)年度から阿武隈急行の赤字を年間5億円程度、補塡してきた。経営改善と軌道や橋梁、トンネルなどの老朽化が大きな課題となっており、「みなし上下分離方式」の導入が必要と判断した。
国の補助を受けるための計画は来年4月から10年間が期間。認可を得れば軌道整備工事や橋りょうの耐震補強、トンネル補修などの設備投資費用の2分の1を国が補助する。県生活交通課は「持続可能な公共交通として維持していく」としている。
4日の協議会はこの他、補助金の交付要件となっている阿武隈急行線の利活用促進策をまとめた地域公共交通計画を承認した。2024年度の利用者は195万人で、ピーク時の1995(平成7)年度の325万人から4割減。鉄道施設の老朽化に伴う修繕費の増加などもあり8億円超の営業損失を計上した。■来年度から10年間の想定施設修繕費など総事業費は170億円に
問われる財源確保
2026(令和8)年度から10年間で想定される施設修繕費などの総事業費は約170億円に上る。阿武隈急行と沿線自治体が4日、見積もりを公表した。国の補助を最大限活用するが沿線自治体にも負担が生じ、財源確保が課題になる。
内訳は、架線の設備更新や駅トイレの洋式化などの設備投資に144億円、土木軌道・電気通信の修繕・管理などの維持修繕に26億円。国の鉄道事業再構築事業は、設備投資のうち利便性向上につながる事業を財政支援するとしている。県は総事業費のうち約61億円が国により補助されると見込んでいる。
残る約109億円は沿線自治体で負担する。福島、宮城両県側で折半する見込み。福島市交通政策課は「(自治体として)少ない負担ではないが、設備投資は避けられない」との認識を示した。沿線の利用拡大につながる施策を進める考えだ。
県などの試算によると、計画最終年度の2035年度の輸送人員が196万人。未実施の場合と比べ34万人の増加を見込んでおり、事業収支も8千万円程度の改善が予想されるという。それでも年間6・6億円の赤字となる計算だ。