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福島市中心部の森合地区で先月末から熊の目撃が相次いでいる。3日夜から4日朝にかけて森合小近くで親子とみられる熊3頭を含む目撃が2件あり、11月29日から4日までの6日間で7件に達した。同校は午前のみで授業を切り上げ、全校児童を保護者に引き渡すなどの対応を取った。12月は平年なら熊が冬眠を始める時期にもかかわらず、街なかを熊が徘徊[はいかい]している可能性がある。市や近隣の学校、警察などは緊迫感を高めている。
3、4の両日の市中心部の主な目撃状況は【地図】の通り。3日午後8時30分ごろに森合字中谷地で体長不明の熊1頭、4日午前8時15分ごろには森合字北谷地で、体長約100センチの熊1頭と体長約50センチの熊2頭の親子とみられる3頭が目撃された。2件の現場は森合小から約100メートル、約150メートルで住宅街に当たる。市農業企画課などによると、同じ個体かは不明で、その後の行方は分かっていない。
森合小は市教委が今秋にまとめた熊出没時の対応ガイドラインに基づき、授業を切り上げて児童を保護者に引き渡すか教職員の付き添いで集団下校するなどした。学校教育課によると、引き渡しは主に災害時などに取られる対応で、同校が熊対応で行うのは今回が初という。
子ども2人を車で迎えに来た40代女性は「学校から連絡が入り、慌てて駆け付けた。通わせるのも怖い」と不安を吐露した。同校は5日も保護者に送迎を要請し、授業を早めに切り上げる予定だ。
ガイドラインは危険の度合いに応じて(1)注意喚起(2)部活動中止など活動制限(3)保護者へ送迎依頼(4)引き渡し(5)臨時休校―の5段階の対応を各校に求めている。学校敷地内に出た際は教員が児童生徒を保護者に引き渡し、翌日はオンライン授業を原則とする。
同じく近隣の福島四中は5日、全校生に自転車通学を認め、部活動を中止する。市学校教育課の芳賀沼彰課長は「子どもたちの命を最優先に今後も各校と緊密に連携する」と語った。
市は4日、森合地区にドラム缶を用いた熊専用の捕獲わな1基を仕掛けた。地区内や信夫山周辺の12カ所の公園に注意看板を設置している。市や福島署は一盃森や信夫山などに熊が潜んでいる恐れがあるとして巡回を強化している。近くに住むアルバイト佐々木遥さん(29)は「熊に出くわしたらどうすればいいのか」と戸惑いを口にした。
4日午後6時ごろには同市南沢又字前田で、畑にいる熊2頭が目撃された。■全市で増加、イルミ中止
福島市内の12月の熊の目撃件数は4日までに10件に上り、過去5年間の同月平均(1・8件)の5倍を超えた。市内荒井の四季の里は出没が相次ぐ状況を踏まえ、20日から来年2月中旬まで実施予定だった恒例のイルミネーションを中止した。担当者は「利用者の安全確保を優先した」としている。
県警本部地域企画課によると、県全体の12月に入ってからの目撃件数は1~3日の3日間で18件と前年同期を15件上回り、過去2年間の12月1カ月間の各21件に迫っている。
福島市の有害鳥獣対策協議会アドバイザーを務める福島大食農学類の望月翔太准教授は県内の熊の行動を「出没はピークを越えた」とみている。ただ、12月中旬から下旬の気象条件や餌の状況次第では冬眠に入る時期が遅れる恐れもあるとし、引き続き警戒を呼びかけている。

