町工場の技術宇宙へ 7日、衛星打ち上げ 開発した機器搭載 福島県内企業裾野広がる

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町工場の技術宇宙へ 7日、衛星打ち上げ 開発した機器搭載 福島県内企業裾野広がる

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福島県内で宇宙産業の裾野が広がっている。7日正午にニュージーランドで打ち上げ予定の人工衛星には、福島県に拠点を置く二つの企業がそれぞれ開発した機器が搭載される。プラズマ推進機を製造したいわき市の高橋電機製作所は、かつて家電製品の部品を製造していたが、価格競争などで受注が減る中で宇宙産業に活路を見いだした。南相馬市小高区に製造拠点を置くマッハコーポレーション(本社・横浜市)が開発した耐放射線カメラとともに、宇宙空間での実証実験で性能を確認、本格的な事業につなげていく。■主力部品受注減契機に
高橋電機製作所(いわき)
高橋電機製作所は従業員30人ほどの中小企業。スパリゾートハワイアンズからほど近い町工場で約20年にわたり、人工衛星の部品を製造している。小型衛星の軌道を修正するための推進機「パルスプラズマスラスタ(TDS―PPT)」を山梨大と共同開発した。
同社はかつて、家電製品の部品を製造してきた。ところが、各社が安価な労働力を求めて工場の海外移転を進めたため、受注が減った。生き残りを模索する中で、高橋徹社長(51)は成長が見込める宇宙産業に着目。周囲から「採算が取れない」と止める声もあったが、電気制御などの技術を高めて衛星メーカーや宇宙航空研究開発機構(JAXA)と取引するようになった。現在は大学や宇宙系ベンチャー企業からの発注で人工衛星の部品をオーダーメードで開発し、売り上げの約7割を占めるという。
今回の人工衛星は「革新的衛星技術実証4号機」と名付けられ、大学や民間企業が開発した部品や機器の実証実験を行うためJAXAが打ち上げる。推進機はフッ素樹脂の一種を燃料とし、小型かつ安価で製造できる。社内で4人ほどのチームを組み、約2年かけて開発した。宇宙の過酷な環境を想定して耐久性を向上させるのに苦心し、開発部の玉木慶弥さん(53)は「何度も基盤を作り直し、試作を重ねた」と振り返る。
寿命を迎えた衛星が宇宙ごみ(スペースデブリ)となることが問題となっている。衛星を大気圏に突入させて焼却するために高性能な推進機の需要が高まると予測している。高橋社長は「実証試験を成功させ、推進機製造を本格的に事業化させたい」と展望を語った。■廃炉作業に活用想定
マッハコーポレーション(南相馬に製造拠点)
県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で打撃を受けた産業再生に向け、航空宇宙関連分野の育成・集積を図っている。県ハイテクプラザの調べでは、県内で43社が宇宙産業に参入しているとされる。小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」、小型月着陸実証機(SLIM)の部品製造に複数の県内企業や会津大が携わった。南相馬市原町区の福島ロボットテストフィールド(ロボテス)は航空宇宙関連の新興企業の実証・研究の場となっている。
マッハコーポレーションのカメラは、高い放射線量下でカラーの映像を撮影できるのが特長だ。培った技術を生かして放射線や温度、真空など厳しい条件下にある宇宙環境でも運用できるカメラを開発した。今後、福島第1原発の廃炉作業での活用も想定している。
人工衛星への搭載を足がかりに、世界に同社カメラの有用性を発信する。鈴木市郎取締役(69)は「技術力の高さを示す絶好のチャンスだ。人工衛星を開発する全世界の企業に売り込みたい」と展望を描く。